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「君たちはどう生きるか」漫画にはなかった小説版の深~いエピソード

コラム

 そして、この物語の根幹となる「おじさんノート」には、どんなメッセージが書かれているのかというと……。

 例えば、「ものの見方について」。銀座のデパートの屋上から東京の街を見下ろし、何十万、何百万の人間の存在に思い至り「人間て、叔父さん、ほんとに分子だね」とつぶやいたコペル君に対し、おじさんはノートにこんな言葉を綴ります。

「人間というものが、いつでも、自分を中心として、ものを見たり考えたりするという性質を持っている」

「自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることが出来ないでしまう。大きな真理は、そういう人の眼には、決してうつらないのだ」

「それが、本当の君の思想というものだ」

メガネと本

 また、物語の最大のエピソードとなる、コペル君が友達を裏切ってしまい後悔と自己嫌悪に苛まれていたとき。おじさんはこんな言葉でコペル君の背中を押します。

「僕たちが、悔恨の思いに打たれるというのは、自分はそうではなく行動する事も出来たのに――、と考えるからだ。正しい理性の声に従って行動するだけの力が、もし僕たちにないのだったら、何で悔恨の苦しみなんか味わうことがあろう」

「僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。だから誤りを犯すこともある。しかし―― 僕たちは自分で自分を決定する力を持っている。だから誤りから立ち直ることもできるのだ」
 
 といった具合に、おじさんはどんなときもやさしく語りかけてくれます。

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