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「ひきこもりはメディアに殺された」元当事者が語る、報道の罪

コラム

報道ガイドラインと法規制の必要性

 ひきこもりの偏見は、ひきこもりの危険性を強調してきた引き出し屋とメディアが大きく影響している。ところが、川崎と練馬の事件後も、2000年代の過ちをメディアは再び繰り返している。ここで思い出さなければならないことは、メディアが広めた引き出し屋による解決策は、アイ・メンタルスクール寮生死亡事件を引き起こしたということだ。

 しかし、残念ながら、引き出し屋から逃れる手段は、この国にはいまだ存在しない。家族と引き出し屋が契約を結びさえすれば、即座に誰もが連れ去られ、寮生活を強制される。ひきこもりだけでなく、求職中の人や家族と喧嘩をしただけの人も連れ去られている。

 したがって、引き出し業者に対しては、法規制を求め、TVに対しては、引き出し屋を使って番組を作らないように、報道ガイドラインの遵守を求めていく必要がある。そうしなければ、新たな悲劇を防ぐことは、もはや難しい。

 引き出し屋たちは、政治家に働きかけ、自分たちの入寮型の自立支援を国の政策にしようとしている。2010年に利用者が少なく効果がないとして廃止された若者自立塾を復活させようとしているのだ。

ひきこもり当事者たちはどう動いてきたか

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 しかし、暴力的・詐欺的入寮型の支援施設に対して法規制がないまま、若者自立塾のような政策を復活させるべきではない。ひきこもり当事者を連れ去り入寮を強制する動きを国が支援すれば、国立のアウシュヴィッツ強制収容所ができ上がってしまうからだ。

 80代の老親が、ひきこもりが長期化した50代の息子の生活を支える「8050」問題が深刻化する中、引き出し屋の支援では「大人のひきこもり」は救えない。100万、200万人とも言われるひきこもりには、多様な支援を考えていくべきだろう。

 一方、ひきこもり当事者たちは、支援者に頼らず、本当に必要な活動を広げて来た。それは、当事者自身で運営される居場所だったり、当事者メディアの発行だ。

「ひきこもり女子会」は主婦や家事手伝いとして見過ごされたひきこもり女子の存在を明らかにし、「ひきこもり新聞」は、声なき声を、当事者自身で世間に届けた。バリアフリーのように、当事者目線で作り上げられた支援が形になったとき、ひきこもりの新しい未来は開かれていくに違いない。

 6月26日、当事者団体と面会した根本匠厚生労働大臣は、「ひきこもりの状態にある方や、そのご家族の声も聞きながら施策を進めていきます」と表明した。また、引き出し屋を事件の解説者に使ったメディアがあった一方で、ひきこもり経験者をスタジオに呼んで話を聞く動きがあった。光と影が交錯する中で、新たな理解が進んでいる。

<TEXT/木村ナオヒロ>

【木村ナオヒロ】
ひきこもり新聞編集長。1984年生まれ。司法試験の勉強をきっかけにひきこもりに。2016年、ひきこもり新聞を発行

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