年収2000万円のキーエンスを1年で退職。“新卒”には価値がない?
平均年収2000万円超で、日本トップレベルの高収入を誇るキーエンス。新卒の就職戦線を勝ち抜き、入社したにも関わらずわずか1年でこの企業を離れ、起業家として舵を切ったのが吉田敬悟さん(25歳・@K5_940310)さんです。
キーエンスの内情を聞いた前回に引き続き、今回はこれまでのキャリアや、現在営む就活支援事業や転職メディア事業から見えてきたことについて話を聞いてみました。
キーエンス入社の動機は“コンプレックス”
――まずはじめに、なぜキーエンスを目指したのか教えてください。
吉田敬悟(以下、吉田):学生時代から抱えていたコンプレックスからです。私は今でこそYouTubeに出たりしていますが、大学時代はかなり根暗だったんです。最初のアルバイトも人と話したくないという理由で居酒屋のキッチンを選んだくらい。
成蹊大学に通っていたのですが、世間の評判の通り、周囲にいる学生はお金持ちばかり。ごく普通の家庭で育った僕は劣等感を募らせていました。
こうしたコンプレックス変えるため、キーエンスを目指すことにしたんです。今思えばちょっと安直だったかもしれませんね。
――キーエンスというと、平均年収の高さや外部からは伺い知りにくい事業内容から、選ばれた人間しか入れないような気もするのですが、吉田さんはどのように対策したのですか?
吉田:正直、私は高学歴ではありませんでしたから、キーエンスも含めて業界を絞らずにとりあえず大手に、とにかくたくさんエントリーシートを出すということをやりました。そして、チャンスをいただけたなかで確実に成果を出そうと面接対策を徹底的に行いました。
すごく特殊なことをやったのかというと、そういうわけではありません。エントリーシートはひたすら添削に出し、面接の練習も数えきれないくらいしましたよ。あとひとつ、他人と違うところがあるとすれば、入塾に24万円くらいかかる高額の就活塾に通っていたことでしょうか。
グレーな塾長が営む就活塾との出会い
――結果としてキーエンスへの切符を手に入れる事ができた就活塾。どんなところだったんですか?
吉田:個人の方がやっている塾でした。就活指導をする人間としては非常に優秀で、有名大学の学生もさることながら、そうではない一般の大学の学生も名の知れた有名企業へと幾人も送り出していました。ただ、人としては……。
――と、言いますと……?
吉田:実績もあって、能力は確かだったんですが、倫理観に欠けていた。セクハラ、パワハラが横行していました。なかには大学のキャリアセンターや警察に相談したほうがいいと思えるようなレベルに発展することもあったんです。
学生は人生がかかっているから逃げられない。親にも迷惑がかかるかもしれない。「高い費用を払ったのに……」と負い目を感じている子たちもいた。塾長は彼ら彼女らの気持ちを逆手に取っていたんです。自分はこの塾長と戦いながら、就活に向けて準備を進めていました。
――吉田さんも何か被害に遭われた?
吉田:いえ、実を言えば同じ時期に入った人間たちの中では彼との距離感が一番近かったです。気に入られて秘書的な立場をやっていました。人生で「本気で許せないな」と思った初めての人間だったのでそばで監視するべきだと思っていたんです。
塾長の行いは到底許せるものではありませんでしたが、一方で冷静な目で見れば、彼の授業の中には実際に就職活動に役に立つものがあったことも事実。
そのときに、自分が彼と同じくらいの能力があればもっと良いものができるだろう。少なくとも塾長の被害に遭ったような学生は減らせるだろうと思ったんです。これが今のモチベーションにもつながっています。