闇営業する若手を救えるか?芸人「就職サポート」運営主に聞く
お笑いの芸歴は社会経験歴だ
――話を戻しますが、芸人から就職しようとしても、社会経験がなく苦しむ人も多いと思います。
中北:でも、月に何度も何百人の前で話してはネタをひたすら書くという行為は「仕事」ですよ。だからうちでは紹介する会社に「芸人」というものを、社会経験としてみてくれる前提の契約をしてもらっています。なので職歴は書かず、芸歴しか書かせないんですよ。それを見て認めてくれる会社としかやりとりしていません。
――確かに、ネタを作ってお客さんの反応を見て、ネタを推敲するということを繰り返すのは仕事ですね。
中北:これはコミュニケーションに対してPDCを回す力が非常に強いということです。もうひとつ芸人の特徴的なスキルは、彼らは不幸なことを面白いと捉えるんですよ。つまり、ストレスフルな状況に強いというより、もうそれがオモロイと感じてるんです。
だから、仕事のあらゆる状況を面白がれるんですよ。それから対人関係のスキルとしては、相手にどうすればウケるかを考えているので、人を喜ばせて懐に飛び込む能力では、他の職業の追随を許さないんじゃないかと思いますね。
元芸人をビジネスマンとして売り込む
――そうしたスキルも普通の会社にはなかなか気づいてもらえないですよね。
中北:だから、芸人としてどんな活動をしてきたか芸能経歴書を書いてもらって、僕が添削して会社に提出してるんですよ。
――芸人の言葉しか話せない人と、ビジネスの言葉にしか価値が見えない人の間で中北さんが「通訳」をしてるんですね。
中北:そして僕のところから就職する人は60~90日、職業訓練のようなことを僕が徹底的にするんです。
40歳手前で芸人を続けている同期がこないだ言ってたのが「まだ売れるって信じてる。でも彼女に毎日結婚の話をされてるし、借金もしてるしつらい」。それでも諦めきれないんですね。だから「誰か俺を救ってくれ」と。