ブームのぬか漬け男子「心がリセットされる」と癒し効果も
仕事先では先輩や上司に叱られて、自宅へ帰ってきたらヘトヘト。さまざまな理不尽から、ときには逃げ出したくなるのも人の性です。そんな毎日から少しでも離れようと、趣味に生きるのもまた一興。心のよりどころとして、自分だけの楽しみを持つというのもひとつの選択肢です。
ひと口に趣味といっても千差万別ですが、今回、話を聞いたのは、ぬか床へ一心に愛をそそぐ「ぬか漬け男子」の本田ハルキさん(仮名・33歳・会社員)です。
健康食品や発酵食品のブームにあやかり、ひそかに注目を集めているぬか漬け。SNSでは、ぬか漬け男子という言葉も生まれていますが、なぜ本田さんはぬか床に癒やしを求めるのか。本音に迫りました。
子供の頃から漬け物が好きだった
――都内のアパートで一人暮らしをしている本田さん。そもそもなぜ、ぬか漬けを作り始めたのでしょうか?
本田ハルキ(以下、本田):実家が秋田県なので、子どもの頃から漬け物が好きだったんですよ(秋田は燻した大根をぬか漬けにする“いぶりがっこ”の特産地)。でも、上京してからは食べる機会も少なくなり、だからといって自分で作っていたわけでもなくて。ぬか漬けを作り始めたのは3年ほど前ですが、ハッキリしたきっかけは正直あんまり覚えてないです。
ただ、周りで作っているという人の話を聞いているうちに「自分でもこれ作れるんじゃないか」と思って。ネットでぬか床のための容器と、今日から始められるみたいなぬか漬けのキットを購入して、そこから作り始めるようになりました。
――作り方はどうやって学んでいったんですか?
本田:ネットにある作り方を参考にしたり、飲食店で働いているので先輩たちからアドバイスをもらっていました。実際に作り始めてみたら、これがまた奥が深くて。ぬか漬けって発酵食品なので、気温の高低にも左右されたりするんですよ。
とはいえ、よくいわれるようなぬか床を「丹念にかき混ぜなければいけない」とか「毎日のように世話しなければいけない」みたいな手間はかからず、それこそ冷蔵庫を上手く使えば年中楽しめるんです。僕なんてまだまだ“ぬか漬け歴”が浅いので、いまだに試行錯誤していますね。
同じ作り方をマネしても一緒の味にならない
――今の時点で、自分なりに見えてきた、ぬか漬けへの哲学ってありますか?
本田:難しい質問ですね(笑)。結局は、素材に行き着くのかなって思います。ぬか床自体は今日から始めても、カビの繁殖などに気を遣っていれば1週間ほどで漬け物を楽しめるようになるんですよ。でも、素材の下ごしらえを間違ってしまうと、肝心の味も台無しになってしまうんです。
僕はとりわけキュウリやニンジン、大根を漬けているんですが、漬ける前に野菜に塩を振ったりしています。ただ食べるだけならばそのままボンッと放り込めばいいと思われがちですが、美味しいものをとなるとそれなりのこだわりも必要で。より旨味が広がるように昆布を足したり、水っぽさを減らすために大根を一夜干ししてから入れてみたりと、けっこう工夫しています。