オリンパス事件を追いかけた映画監督が問う「日本メディアの忖度」
昨今の日本を駆けめぐる巨大組織の隠蔽事件、排斥やハラスメント行動、偏向だらけのマスコミのニュースにうんざりして、少しでも日本の将来に不安を感じたなら、ぜひ観て欲しい映画がある。
東京都渋谷区のシアター・イメージフォーラムにて5月19日から公開される『サムライと愚か者 -オリンパス事件の全貌-』だ。
この作品は、2011年に起きた「オリンパス損失隠蔽事件(以下、オリンパス事件)」の全貌を追いかけたドキュメンタリー映画だ。
オリンパス事件は、雑誌「FACTA」で山口義正氏のスクープを皮切りに、オリンパスの当時社長だったマイケル・ウッドフォード氏が不当解任。同氏の内部告発によって粉飾決算が明るみとなり、世界中から注目を集めた。
映画では当事者であるウッドフォード氏への取材を中心に、事件の経緯、国内外のマスコミの反応を詳らかに伝え、日本社会の現状、そしてジャーナリズムの在り方について、鋭くメスを入れている。
今回は、監督としてオリンパス事件の全貌を追いかけた山本兵衛氏にインタビュー。映画制作の裏側を聞きながら、現代の若者に伝えたいメッセージについて尋ねてみた。
オリンパス事件を内部告発した元社長
――映画は2011年に起きた「オリンパス事件」をテーマにしていますが、作品が生まれた経緯を教えてください。
山本兵衛(以下、山本):オリンパス事件に興味を持ったのは、チームオクヤマの奥山和由さん(プロデューサー。北野武監督作品やカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品『うなぎ』などを手掛けている)からお誘いいただいたことがきっかけでした。「何か興味ある?」と聞かせてもらった企画の中に入っていたのがオリンパス事件です。
当初は日本社会に入ってきた海外の方が、文化的価値観の違いから問題を起こすという構図が面白いなと興味を持ちました。でも、本格的にリサーチをしていくうち、もっと根深い色々なテーマが見えてきたのです。
――山本監督はオリンパス事件をどのようにご覧になりましたか。
山本:オリンパス事件がここまで表面化したのは、ジャーナリストの山口義正氏によるFACTAの告発記事が発端ではあるものの、やはり渦中の元オリンパス社長、マイケル・ウッドフォード氏の存在が大きかったと思います。
彼は1960年にリバプールに生まれ、1981年にオリンパスの医療事業の英国代理店キーメッド社にセールスマンとして入社。入社9年という異例の速さでオリンパスの代表取締役社長に上り詰めた、叩き上げの人物でした。
BBCのプロデュサーによれば、階級社会のあるイギリスで、彼ほどのサクセスストーリーは非常に珍しいそうです。社内ではスパルタで厳格な経営者として知られ、カリスマ性と語りの上手さを持っていた。オリンパスの会長だった菊川剛氏とも家族ぐるみの親交があったと聞きます。