OB訪問はセクハラの温床か?プロに聞く「トラブルを防止する方法」
今年2月、就活の一環でOB訪問してきた女子学生にわいせつな行為をしたとして、ゼネコン大林組の社員(27)が強制わいせつ容疑で逮捕された(3月、不起訴処分に)。また、3月には住友商事の元社員(24)も、OB訪問に来た女子大生に性的暴行を加え、準強制性交などの容疑で逮捕された。
これらの事件以降、OB訪問はセクハラの温床であると話題になっている。
それでも、学生たちはOB・OG訪問をし続けるのだろうか。就職活動事情に詳しい千葉商科大学専任講師の常見陽平氏に聞いた。
OB・OG訪問には大きなメリットがある
「前提として今の学生のほとんどは、OB・OG訪問をしていません。HR総研が、2018年卒生を対象に実施した調査によれば、OB・OG訪問をしない学生が7割。した人も1、2社がほとんどです」
だが、OB・OG訪問は、「うまく使えば極めて有益な手段」だと常見氏は言う。
「会社の組織風土や内部事情の一端に触れられるし、社会人相手のマナーを身につけられ、コミュニケーション能力も鍛えられ、選考対策になるのは学生にとって大きなメリットです」
うまく機能すればメリットの大きいOB・OG訪問だが、2000年代前半の個人情報保護法施行以来、訪問先選びの方法が様変わりしている。
「それまで大学によってはキャリアセンターにOB・OGの就職先や連絡先リストがあり、後輩たちは志望企業に勤める先輩に容易にアクセス可能でした。が、情報開示が厳しくなってから、OB・OG訪問先の開拓手段はSNSやアプリにシフトしました」
企業側や大学もトラブルを防ぐ対策を
冒頭の大林組のケースも、女子学生と社員はOB訪問マッチングアプリで知りあったのだ。まったく縁のない者同士が繫がる時代だからこそ、自分を守るという発想がお互いに必要になってくる。
「ツールのひとつであるマッチングアプリは、外から見えづらく個人対個人の関係になりがちです。学生が身を守るためにできることといえば、昼間に人目の届く場所で会い、不穏な話題にそれたら『あくまで会社の話を伺いたいので』と指摘する勇気を持つことですね」
もちろん、よからぬことを考えるOB・OG側が悪いのだが、残念ながら学生側も警戒しないといけない時代なのだ。
また、常見氏は企業側や大学のあり方についても指摘する。
「採用の場に限らず、学生と接点をもつ際には企業人の自覚をもった言動が求められます。また、大学は就活マナーだけでなく危機管理も指導し、警鐘を鳴らしていくべきでしょう」
人手不足の日本で“イキのいい若者”は国家の宝。その芽をつぶさぬ社会でありたいものだ。
【常見陽平】
千葉商科大学専任講師。学生の就活、労働問題、若者論を中心に精力的に情報を発信中。
― セクハラOB訪問の実態 ―