19時間並んで5万円の収入!ニューヨークで注目の副業「行列代行」とは?
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副業に関する調査を紹介するbizSPA!の連載。今回は、アメリカで存在感を示しているちょっと変わった副業に関する調査を紹介します。その名も「Professional Line Sitter」。どんな副業か、想像できますか?
19時間並んで325米ドルを稼ぎ開業へ
世の中には、変わった副業がたくさんあると思いますが、アメリカで存在感を示している副業、プロの行列代行(professional line sitting)をご存じですか?
新作iPhoneの発売日だとか、人気コンサートのチケット販売時だとかに発生する長い行列に、依頼主の代わりに並んで目的を遂行する副業になります。
ビジネスインサイダーの2015年(平成27年)の記事では、ニューヨークを拠点にするSame Ole Line Dudesという会社が一例として紹介されています。
同社を紹介したYouTubeビデオでは、創業者が以下のように語っています。
「Anything in New York with a long line, you hire us and we do it so you don’t have to. (なんであっても、ニューヨークで長い列ができていたら、われわれにご用命ください。われわれが代わりに並びます。あなたが並ぶ必要はありません)」
ウーバーのような感覚で、例えば、欲しいチケットが、家で寝ていても届くみたいなサービスだとの説明もあります。
そもそも、同社の創業者であるロバート・サミュエルさんは創業年の2012年(平成24年)、失業中の身だったとか。キャッシュがどうしても必要だったため、その時に発売されたiPhone5の列に代わりに並ぶと広告を出し、19時間並んで325米ドル(約4万9,316円)を稼いだといいます。
その時に手ごたえを感じ、ロバート・サミュエルさんは会社を立ち上げ、サービスを展開し、従業員を雇うまでに会社を大きくしました。
同社公式ホームページによると、現在の利用料金は、2時間(必要最低時間)の行列代行に50米ドル(約6,630円)が発生するとされています。その後、1時間追加するごとに25米ドル(約3,315円)、30分ごとの追加で15米ドル(約2,085円)の支払いが利用者は求められます。
この仕事をする(並ぶ側の人)には当然、副業者も含まれています。とてもユニークな業務内容ですが、ニーズや利用者の顔が明確に見える副業なので、業務に携わる側にも安心感はあるはずです。
周りの人は意外に怒らない
この行列代行、周りの反応はどうなのでしょう。
同社のホームページには「よくある質問」として「Is this legal?(これって合法なの?)」「Do other people get mad?(周りの人は怒らない?)」といった質問があります。
その問いに対する同社の回答は「問題ない」との話。並んでいる最中「自分が行列代行である」とスタッフは周りの人に伝えるみたいですし、会社そのものも、きちんと認められた法人である(法的に認められている)とアピールしています。
興味深い研究もあります。2024年(令和6年)に発表された研究論文によると、優先権を購入できる優先レーンを設ける場合と、行列代行(professional line sitting)を雇うことを認める場合では、周りで待っている人たちは、優先レーンを行く人たちに対して、よりネガティブに感じるそうです。
行列代行の人が1人で、何人分もの代役を兼ねている時は周りも不快に思うみたいですが、行列代行の人1人が、誰か別の1人の代わりに立っている分には、公平性が維持されると感じる人が多いようです。
言い換えると、優先レーンなどを設けると、待っている人の感情がマイナスに働くので、行列代行(professional line sitting)を企業の側も認めたほうがいいという話です。
ちょっとユニークに見える仕事ながら、理にかなったビジネスモデルともいえるかもしれません。
行列代行の単発仕事は日本でも
国内のケースを調べてみると日本にも実際に、行列代行の仕事は存在しました。
短期・単発の仕事に特化した求人マッチングサイト〈シェアジョブ〉には、渋谷区で開催される人気アイドルグループのグッズ購入列の並び代行の仕事が「報酬3,500円~」の条件で掲載されています。
この場合、午前11時から販売開始となるグッズ販売の列に午前8時半から並んで、午前11時半ごろに、レジ近くで依頼主とバトンタッチする仕事内容になります。
3時間の業務だとすれば時給は1,000円ちょっと。今の時代、突出して給料のいい仕事とはいえませんが、ただ立って並んでいるだけの業務ですから、専門性は特に必要ありません。
新たな学びも特に必要ない単発の副業を探している人は「行列代行」という選択肢を頭に入れてみてもいいかもしれませんね。
[文/坂本正敬]
[参考]
People are paying up to $1,500 for someone else to take their place in line – BUSINESS INSIDER
Hire A Line Stander (To Do The Waiting For You) – taskrabbit
Skip the line? Nah, just pay someone to stand there – AXIOS
Not All Lines Are Skipped Equally: An Experimental Investigation of Line-Sitting and Express Lines – informs
These Dudes Get Paid Thousands to Sit in Line – YouTube
渋谷区で人気アイドルグループのグッズ購入列の並び代行 – シェアジョブ