コロナ、食材高騰、円安の“三重苦”…飲食店から悲鳴の声「自助で乗り切るしかない」
止まらない円安。中小企業はコスト増加に悲鳴を上げている。客離れを心配して、コストを価格に転嫁できないなか、円安倒産が記録的な件数に。このまま倒産件数は増えるのか? 円安に苦しむ現場の声を届ける。
送料や輸送費高騰が経費を圧迫
「コロナは下火になったとはいえ、まだまだ客足は戻りきっていません。それが今度は、円安だなんて……」。東京都江東区にある家庭料理店「山食堂」の矢沢路恵氏は表情を曇らせる。先代の後を継ぎ、パートナーと2人で同店を営んでいる。
「ウチの店はメニューが日替わり。国産の旬の安価な食材を仕入れたり、地方の農家さんから送られてきた野菜を使うことで原材料費自体は抑えられています。ただ送料や輸送費が高騰しているので、諸経費は確実に逼迫していますね。輸入品の小麦粉やバター、チーズを多く使わざるをえない同業者の話を聞くたびに胸が苦しくなります」
“自助”で乗り切るしかない苦労
さらに「今年ならでは」の苦労もあるという。
「緊急事態宣言時に自治体から支払われた協力金は、事業所得になって課税の対象に。今年は所得税、住民税などの税金や社会保険料の負担が大幅に増えてかなり厳しい。コロナでは協力金も出ましたが、当然ながら今度の円安はなんの補償もない。国の施策にも頼れず、周囲のお店も“自助”で乗り切るしかないと口を揃えています」
コロナ、食材の高騰、円安……。次から次へと押し寄せる波に、飲食店の悲鳴は止まらない。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
【矢沢路恵】
山食堂は全国の選りすぐりのお酒と旬の食材を提供。パートナーの山谷知生さんが調理を担当。
Instagram:@yamashokudo