河合楽器は過去最高益に。楽器業界3社の「V字回復」を支える“海外要因”
コロナ禍では音楽教室や楽器店の休業、音楽イベントの中止が相次ぎました。一方、自宅で音楽を楽しむ人が増え、楽器の売れ行きが伸びているというニュースも出ています。
楽器業界にとってプラス面、マイナス面となるニュースが同時に聞かれますが、コロナ禍は楽器業界にどう影響したのでしょうか。大手3社の決算資料を参考に近年の推移や、業界の今後について見ていきます。
ヤマハ:楽器事業と音響機器事業を展開
ヤマハ株式会社は(1)楽器事業、(2)音響機器事業の2事業を展開しています。楽器事業ではピアノ、ギター、ドラム、管楽器など各種楽器の他、電子楽器の製造販売を手がけています。音響機器事業では各種オーディオ機器や業務用音響機器を生産しています。
混同されがちですがバイクを生産するヤマハ発動機とは別会社。同社はヤマハのオートバイ事業が1955年に独立して誕生した企業です。2019/3期から2022/3期までの業績は次の通りです。
【ヤマハ株式会社(2019/3期~2022/3期)】
売上高:4344億円→4142億円→3726億円→4082億円
営業利益:528億円→433億円→350億円→493億円
最終利益:403億円→346億円→266億円→373億円
楽器事業売上高:2820億円→2694億円→2390億円→2762億円
音響機器事業売上高:1207億円→1144億円→1038億円→969億円
需要減も、反動で回復した
2020/3期から見ていきましょう。(1)事業は第4四半期にコロナ影響を受けましたが、通期では国内以外の全地域が増収となりました。一方の(2)事業は国内における音響設備工事が堅調となり、(1)事業同様に増収となりました。しかし、海外売上比率が7割ということもあり、同年は円高で海外通貨の価値が低下したため、数字上では全社売上高が減少しています。
コロナ禍の翌2021/3期は、アコースティックピアノや電子楽器が部品の供給不足で減収となったほか、外出自粛や販売店休業の影響を受けて、(1)事業の売上高が大幅に減少しました。(2)事業もライブイベントの自粛が影響して減収となっています。巣ごもり需要の寄与は限定的だったようです。
しかし、2022/3期は反動で業績が伸びました。(1)事業は経済活動の回復に伴って全ての商品が増収となり、地域別に見ても国内・海外の全地域で増収を記録しました。一方で(2)事業はオーディオ機器や業務用音響機器の需要が伸びたものの、半導体不足の影響で供給不足に陥り、前年に続いて減収が続いてしまいました。
近年の業績を見ると2020/3期は為替要因、翌2021/3期はコロナの感染拡大で業績が悪化したものの、2022/3期は前年の反動でやや回復していることが分かります。