銃撃の責任は「アベ批判派の悪口」に?権力者へのスタンスを考える
東京大学中退の経歴で、マルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(45歳・@DARTHREIDER)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。
第26回参議院選挙の期間中である2022年7月8日、安倍晋三元首相が奈良県での自民党候補の応援演説中に銃撃され、亡くなりました。国内外に大きな衝撃を与えたこの事件を通し、われわれは何を考えるべきか、前後編にわたりダースレーダーが見解をつづる(以下、ダースレイダー氏の寄稿)。
「安倍元首相が撃たれた」速報の衝撃
街頭演説中だった安倍元首相が、奈良市の近鉄大和西大寺駅付近で銃撃された7月8日。僕は、時事ネタを得意とするお笑い芸人・プチ鹿島さんと毎週金曜日にやっている配信番組「ヒルカラナンデス」での選挙取材も兼ねて大阪を訪れていました。
大阪のホテルで12時から配信を始めるため、新幹線で大阪に向かい、集合時間だった午前11時50分に配信する部屋に入りました。その後、鹿島さんがいらして「11時半頃に安倍さんが倒れた。どうやら銃声がしたようだ」という速報を聞きました。
10分後に配信を開始する予定だったので、ホテルではNHKをつけたまま、ライブ配信をすることになります。何が起きたのかまったくわからなかったので、すごくショッキングな状況でした。
僕は参院選の街宣で安倍元首相を見ていた
参院選が公示された6月22日、僕はいろいろな候補の街頭演説を見に、新宿駅西口へ行っていました。そこには自民党・朝日健太郎候補の応援弁士として安倍さんが来ていて、僕は街頭演説はなるべく前のほうで見るようにしていたので、目の前でご本人がしゃべっているのを見ています。
若いカップルがスマホで気軽に撮影をしていったりとか、聴衆の年齢層は他の候補に比べたら若いなという印象も持ちながら、聞いていました。
僕にとっては、参院選の各候補の応援演説の中の一場面でしたが、7月8日の事件を受けて、目の前で生身の人間として存在していた人物が、銃撃されたという受け止め方になります。“公的なフィギュア”としての大きなイメージと、より近い距離感では、受け止め方が違ってくるということを、体験することになりました。
距離感によって「その人物や、その人物に起きたできごとをどのように感じられるか」は実はすごく多層的で、さらにそうした人間のさまざまな関わり合いによって、人それぞれイメージの持ち方があるんだろうなと、改めてこのとき自分の感覚としても確認できました。