<漫画>お笑いは趣味で続けられない?「新たな選択肢」を描いた元芸人を直撃
メーカーの総務で働く若手会社員の渋谷には家庭の事情でお笑い芸人を諦めた過去があった。社会の歯車としてつつがなく働く毎日を過ごすなか、久しぶりに会った元相方の高峰は、コンビを再結成してまた舞台に立ちたいのだという。自身の持つ芸人像と現実のはざまで思い悩む渋谷。果たして彼が下す決断は……。
「good!アフタヌーン」で連載中の『週末芸人』(講談社)は、「社会人お笑い」をテーマにした作品で、そのリアルな描写に多くの賛辞が寄せられている。
前回の記事に引き続き、今回は、本作を生み出した漫画家の久保田之都さん(@kubota0612)に社会人お笑いシーンについて聞いた。インタビューと共に、『週末芸人』の第1話後編を紹介する。ぜひ最後まで目を通していただきたい。
【マンガ】⇒『週末芸人』の「第1話前編」を読む
【マンガ】⇒『週末芸人』の「第1話後編」から読む
高峰にはモデルになった人物が複数
――主人公の渋谷は会社員ですが、元相方の高峰はフリーランスで構成作家やYouTuberとして活動しています。彼のようにお笑いでも会社員でもない第3の道を選ぶ人もいますよね?
久保田之都(以下、久保田):お笑いに昔気質な理想を持っている渋谷を、高峰は新しい価値観で引っ張っていくキャラなのですが、参考にした仲間は複数います。彼らも既存の型にはまらないキャリアを築いていますね。
なかでも1歳下の元芸人で、まさに「社会人お笑い」というブランドを作ろうとしている人がいて。彼は社会人お笑いの大会をバンバン企画して、既存の肩書きや枠組みを変えようとしています。そして実際に変わってきてる。その生き方や柔軟性には僕自身も影響を受けています。
趣味で続けられないお笑いは特殊
――「社会人お笑い」という枠組みができる前のアマチュアお笑い事情はどのようなものだったのでしょうか?
久保田:アマチュア漫才は学生時代に終わらせて養成所とかに入るか、そうじゃなければ、もう一切関わらないみたいな。昔は社会に出るときに、プロを目指すかやめるかの2択だったんで、お笑いだけ特殊ですよね。野球やサッカーだったら社会人になっても、趣味で続ける人もたくさんいます。しかしお笑いに関してはなぜかやめなければいけない。
――本作にはプロ意識ゆえ、アマチュアお笑いをやることを認めない芸人も登場します。続けにくいのはそのような価値観も影響していたのでしょうか?
久保田:決して個人の美意識の話だけではないと考えています。芸能事務所に所属した場合は、副業ができないとか外堀が完全に埋まってるんです。今はYouTubeでの個人配信などいろいろな道も出てきましたが、制度や構造の問題もあったんですよ。社会人お笑いもお笑いを続ける選択肢を増やしてくれる場として、今後も大きくなっていくと思います。