飲み会はツラいよ――文化系のための会社サバイバル術
体育会系の修行をしないままに、会社員になってしまった。
ここで言う体育会系とは、組織の縦割り、つまり上下関係を重んじる気質を指す。さて私は、小劇場俳優から営業職への転身という、異例の経歴をもったアラサー会社員である。
学生時代も演劇活動をしていたが、演劇サークルに所属はしていなかった。
理由は、サークル新歓時に、伝統ある演劇サークルへ体験入部したら、いきなり上級生に名前を呼び捨てにされ、体力勝負の訓練メニューを受けさせられ腹がたったからである。このように縦割りへの耐性が一切ない。そんな私が、会社員になってしまった。
正座を崩した私に「ちょっと、先輩の前だよ!」
体育会系の修行を一切してこなかった人間にとって、会社員は難しい。
もちろん縦割りのオキテの厳しさには会社によってグラデーションがあるが、私がこれまでに勤めてきた会社は「古き良き」と言ってさしつかえない社風だった思う。つまり縦割りのオキテがしっかりと機能している会社である。
新入社員歓迎会飲み会で、真っ先に正座を崩した私を見とがめて、年下の同期は小声で耳打ちした「ちょっと、先輩の前だよ!」私は大変驚いて、しかし瞬時に(先輩の前で正座をくずしてはいけないのか!)と悟り、「ちょっと酔っちゃって!」ととりつくろったが、一時が万事こんな調子だ。
飲み会は特に苦労する。この文章は同じくレベルゼロの状態で会社員になってしまい、飲み会の後で一人反省会をしてはさめざめと泣いている同胞のために書く。
飲み会・会食はマジ鬼門である
我々にとって飲み会・会食はマジで鬼門だ。「ルールを知らない」「気が利かない」の二重苦が我々を追い詰める。
「ルール」については、所属の集団のオキテを学ぶしかない。私は上司より先に箸を割ってひどく怒られたことがあるが、このエピソードについては「そりゃ怒られるでしょ」という人と「何それウケる」という人がいると思う。
ずっと同じ会社にいると気がつきにくいが、重要視されるオキテは会社や部署によって違うので、これはもう、先輩方に習い、習得していくしかない。
「気が利かない」のほうはより絶望的である。あなたの眼の前には目上の人がいて、グラスのビールはのこり4分の1ほどになっている。あなたは、どうすべきか。もちろん、ビールを注ぎ足す?
今の私が出せる最適の解は、「飲み物どうされますか」と聞いちゃう、である。当たり前だろ、と思った人や、聞かなくても分かるだろ、と思った方にはどうぞそのまま輝かしい人生を歩んでいっていただきたい。