夜のプロントは「レトロ酒場」に。カフェ市場寡占化への危機感が背景に
カフェ&バーとして人気の「PRONTO」。ランチや打ち合わせ、休憩の場として利便性が高く、おしゃれな雰囲気でお酒を楽しめるため、根強い人気がある。
しかし最近、その「PRONTO」の変化に気付いている人も多いだろう。夜、店舗の前を通ると昼間とは明らかに雰囲気が異なっており、思わず足を止めてしまう。のれんがかかり、バーというより“酒場”のようなたたずまいなのだ。レトロ感あるフォントで書かれた「キッサカバ」という文字にも惹かれ、ついのれん越しに店内をのぞきこんでしまう。
昼はカフェ・夜はバーというのが従来の「PRONTO」のイメージだったが、昼と夜で完全に別世界になってしまっているようだ。これには「PRONTO」のリブランディング戦略が大きく関わっている。その出発点や狙いとは何なのか。株式会社プロントコーポレーション・取締役の片山義一氏に話を聞いた。
かつては先駆的存在だったが
昼はカフェ、夜はショットバーとして「PRONTO」(以下、プロント)が創業したのは1980年代後半。おしゃれな空間でお茶や食事、お酒を楽しめることもあって若い世代を中心に人気を博し、“カフェ&バーブーム”の先駆的存在でもあった。だが、それから30年以上が経った今、そのスタイルは成り立たなくなっていると、片山氏は話す。
「『コーヒーを飲みたい』と思ったとき、複数のブランドが思い浮かぶでしょう。しかしそのときに、プロントはすぐにイメージしてもらえないのです。選択肢に入っていないということは、そのブランド力に問題があります」
最優先課題はブランド力の回復
街の個人喫茶店が主流だった時代から平成以降のカフェブームもあり、カフェ市場は大手の寡占状態にある。プロントが独自におこなった調査では、若い世代においては“プロント=パスタのお店”というイメージが強く、またカフェとしての認知度も低いことがわかったそうだ。
「コンビニといえば? と聞かれると、瞬時に思い浮かぶブランドは3社くらいでしょう。カフェ市場もそれと同じことが起こっています。屋号の寡占市場で大切なことは、瞬発的にイメージしてもらえるブランド力があるかどうかです」
2020年以降続く新型コロナウイルスの影響も、リブランディングのきっかけになったという。
「緊急事態宣言が繰り返される中、お客様にとって外食が貴重な機会となり、せっかく行くなら、と、より店を選ぶ傾向が強くなりました。弊社の店舗は競合他社に比べ、売り上げの回復が遅く、カフェ&バーもすでにトレンドではなくなっています。ブランド力だけでなく、業態そのものの弱さがコロナ禍で浮き彫りになってしまいました」