「スーパードライ」発売36年で初フルリニューアルのワケを直撃。辛口への誤解も
ビール市場が、いま再び、熱い。近年、若者の酒離れやアルコール飲料の多様化などの影響で、2021年までのビール類市場の販売数量は17年間連続で減少。業界にも停滞感が漂っていた。
【画像をすべて見る】⇒次へ>をタップすると次の画像が見られます
ところが、2020年、新しい動きが起きた。コロナ禍でのステイホームや家飲みなどの巣ごもり需要を背景に、手頃な新ジャンル(第三のビール)や、糖質を抑えた「糖質オフ・糖質ゼロ」のビール類が大躍進を見せたのだ。さらに、2022年はビール4社が次々と商品のリニューアルを発表。長らく冷え込んでいたビール類市場が、にわかに活気を帯びている。
そんななか、アサヒビールは自社主力商品「スーパードライ」のフルリニューアルを決行する。発売以来36年目で初の試みで、2月中旬頃から順次展開される。しかし、すでに多くの固定ファンを持ち、歴史ある目玉商品に手をつけることへの不安や反発はなかったのだろうか。アサヒビール株式会社ビールマーケティング部の松橋裕介氏に話を聞いた。
「缶詰のようだ」と言われた発売期
スーパードライは、1987年の発売以来、アサヒビールの看板商品として成長してきた。「挑戦」や「達成」といった独自の世界観と「キレのある辛口の味わい」を武器に、日本ビール市場での存在感を確立している。しかし、これまでの道のりは決して順風満帆ではなかったという。
「スーパードライのシルバー缶が初めて世に出たとき、『ビールらしくない、缶詰のようだ』と酷評する人もいたと聞きます。今では缶ビールが主流ですが、当時は瓶ビールのラベルを前提にしたデザインが多かった時代。メタリックなシルバーはかなり斬新だったのだと思います。しかし、スーパードライは発売からすぐに話題となり、初年度から大ヒット商品になりました」
唯一無二の辛口で「ビールの王道」へ
その後、スーパードライはビール市場の中で堅固なブランドに成長してきた。しかし、ビール市場は1994年をピークに縮小の一途をたどる。
「価格の低い発泡酒や新ジャンル(第三のビール)が登場したことで、一部の顧客はビールから離れてしまいました。それでも、日本の他のビールにはない『唯一無二の辛口』と、シルバーの缶に象徴される『挑戦』や『達成』といった世界観を一貫して守り続けたことで、ビール市場の中でのポジションを保ってきたと思っています。
2021年のスーパードライユーザー数は1960万人。『ビールの王道』と言っていただくこともありますが、お客様に育てていただいたブランドです」