転職で「浮いた存在」に?新しい職場で周りに理解される3つのコツ
20代は、差がつきやすい時期だ。就職、転職、昇進、給与、結婚で人生が大きく変わる人がいる一方で、スムーズに進まない人もいる。「こんなことでよかったんだろうか」と考え込む人はいるのではないか。
本シリーズ「20代で中途採用入社した社員がぶつかる、見えない壁」では、20代後半の時期にぶつかりやすい壁の乗り越え方を読者とともに考えたい。記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。
事例:「成果に急ぐあまり、職場で浮いた存在に」
29歳の新里裕子(仮名)は3年前の2018年、印刷会社(正社員500人)に中途採用で入社した。配属部署は経理・総務課。前職の金融機関(正社員1200人)では、経理課に3年いた。転職当初から、「社内清算の仕方がおかしい」「給与計算は〇〇社に発注したほうが正確で、速い」と経理・総務課の会議で言った。
前職では、保守的な社風や前例踏襲の仕事の仕方に不満があった。うっ積したものを解き放つかのように、新しい職場で問題提起を繰り返した。経理・総務課の課長から「新しい風を注ぎ込んでほしい」と言われていたこともある。
仕事にも懸命に取り組んだ。高いレベルを見せつければ、皆が自分の言うことを聞くと思った。だが、経理・総務課の社員3人からは浮いた存在になっていく。挨拶すらしてもらえない。それでも、仕事のやり方を否定し、自分流で進めようとした。「そのほうが、高い成果や実績を残すことができる。部署や会社のためになる」と信じた。
周囲との摩擦は絶えなかった。課長や部長も、だんだんと離れていく。経理・総務課以外の部署にも、経理・総務課の社員3人から様々な話が流れていた。社内でいつしか孤立し、さしたる実績を残すことなく、今年の春に退職した。
回答① まずは新しい職場で理解されるように
中途採用で入社すると成果や実績を早く残し、アピールしたくなる場合がある。血気盛んな20代ならば、なおさらだろう。つい、前職と比較をして問題点を指摘しまいがちだ。これでは、成果や実績を残すことができない皮肉な結果を導くことになりかねない。では、どうすればいいのか。多くの企業の総務、人事から採用の相談を受ける特定社会保険労務士の長沢有紀さん(@nagasawayuki)に取材を試みた。
長沢さんは「気負いすぎる人はやる気が空回りし、1~2年後に上手くいかずに退職するケースが目立つ」と言い切る。
「まずはその部署や会社に溶け込み、周囲から理解されるようにしたほうがいい。特に大企業から中小企業に転職すると、何かと否定しがちになる。新しい職場でさっそく問題提起をしたいのはわからないでもないが、会社や部署のことを理解せずに改革はできない。
入社後すぐに会社や部署の仕事の仕方を否定すると、正論だとしても不愉快に思う人がいる。成果や結果を出したいならば、なおさら理解されるように試みていただきたい。成果を残したとしても、協調性やチームワークができない人は会社の中で高く評価されることはほとんどないと思う」