ワクチン接種義務化で対立が進むアメリカ、「家族や友人間が分断」の背景
米国ロサンゼルス(L.A.)では、2021年8月14日(土)にダウンタウン・ロサンゼルスにてワクチン反対のデモが発生した(英字記事)。
なぜデモが? 市役所や学校などの公共機関で働く職員たちのワクチン接種義務化が決まり、公共施設やレストランやショップなどの屋内へ入る際にはワクチン接種の証明書を提示する決まりが導入される可能性が出てくることに対して、「ワクチン接種義務化」と「ワクチンパスポートの導入」に反対する抗議が行なわれたのだ。米国在住ライターの筆者が伝える。
マスク論争と同じことが起こっている?
デモ隊は「医療における専制政治」と批判。マスク反対のデモと同様に、デモをする人たちの主な主張は「個人の自由と権利」だ。デモの人たちの大半を占めたのは、ドナルド・トランプ元大統領支持者や共和党支持者たちだが、「自分の行動は自分で決める」と訴え、マスク着用もワクチン接種も拒否し、「マスク&ワクチン反対派」を名乗っている。
ここで、日本と米国の大きな違いも理解したい。日本では風邪を引いた時や予防のためにマスク着用する人が普段から多いが、米国ではマスク着用の習慣はなく、街でマスク着用する人はコロナ前では皆無だったのだ。
普段、米国でマスクを着用する人たちは特別な人たちだけだ。例えば、「病院で手術をする際の医師」や「特殊な重病人」「工事現場でマスクが必要な作業をする作業員」に限られている。しかも、米国では顔の半分を隠すフェイスマスクは犯罪者のイメージが強く、警察官から犯罪を疑われたり暴力を受けたりすることの多い黒人男性たちがマスク着用をためらうケースがある。さらに、顔を隠して黒人に脅迫や暴行などを行なう白人至上主義団体の人たちもいるため、コロナ前にはフェイスマスク着用が禁じられていた州もあった。
ワクチン接種を拒否する人の倫理
しかも、コロナ感染予防のマスク着用は「男らしさに欠ける」という偏見もあり、男性の多くはマスクを着用することに対して恥ずかしい行為とみなしている。このようにさまざまな理由があり、マスク着用に対して異常な拒否反応を起こす人が米国には目立つ。「子どもたちはマスク着用によって呼吸がうまくできず酸欠状態になり、健康に害を及ぼす」という親もいる。
マスク着用について、コロナ感染を抑える効果が期待できることを理解している人も多いが、フロリダ州やテキサス州など、州によっては州知事自らが「マスク着用を州民に強要することは許されない」と発言し、州民のマスク着用義務を禁じてしまう事態にもなっている。そのため、コロナ禍の2020年から「マスク着用における米国の分断」が続いているのだ。
そんな中、ワクチン接種をめぐっても分断が発生している。
マスク反対派のように、個人の自由や権利を主張してワクチンに反対する人はもとより、自閉症を引き起こす疑いのあるワクチンの存在などを理由に極端にすべてのワクチンを拒絶する人や、「コロナのワクチンに関しては、FDA(U.S. Food and Drug Administration / 米国食品医薬品局)が緊急に使用することを承認しただけで正式には承認していないから、副作用はもとより長期にわたる健康被害を懸念する」という考えでコロナのワクチンに限って接種を拒否する人もいる。