29歳早大卒女優・行平あい佳が語る、難役の重圧「半身不随の夫を支えて…」
『私の奴隷になりなさい 第2章 ご主人様と呼ばせてください』で映画初主演を飾り、連続テレビ小説『スカーレット』で演じた、草間宗一郎の妻役でも印象を残した行平あい佳さん(29)。
現在、半身麻痺の夫・スギちゃんを懸命に支える女性・サキを演じた主演映画『「アララト」誰でもない恋人たちの風景vol.3』が公開中です。
早稲田大学教育学部を卒業後、フリーランスで助監督をしていた異色のキャリアを持つ行平さんに25歳のときに訪れた分岐点とは? 本作で演じたサキの感じる重圧、「パンっ!」と感情が飛んでしまったというほど厳しかった撮影についても聞きました。
半分ドキュメンタリーみたいな感じ
――映画を見て、スギちゃん役の荻田忠利さんは、半身不随を演じているのだと思っていました。
行平あい佳(以下、行平):荻田さんは大先輩ですが、とても明るい方です。後天的に半身不随になられて、そこから映像に出られる決断をされました。俳優としてすごく気持ちが強いんだろうなと、覚悟を感じましたね。
撮影は想像の倍以上の時間がかかりましたし、はじめての時間軸でテストやお芝居をする形になったので、合うまでが大変でした。半分ドキュメンタリーみたいな感じです。
――行平さんが演じたサキはスギちゃんを支えていますが、本当にエライなと。
行平:強い人ですよね。甘えようとも、介護をやめようとも、やろうと思えばできるはずだけれど、そうじゃなくて、ただスギちゃんと一緒に生きていくということが、彼女にとっての強い意志だと思いました。
「私にはできない」と他人事にはできない
――とはいえ、すべてを諦めてしまって、「何もやる気が起きない」と言っているスギちゃんを目の前にすると凹みますよね。一番苦しいのは本人なのはもちろんなんですけど。
行平:「言い方ってものがあるでしょ」とは言いたくなりますよね。サキとして感じることに難しさはなかったんですけど、介護経験の全くない行平あい佳という30歳手前の人間からすると、すごい重圧が襲ってきて、そのなかで明るく過ごすのはものすごく大変なことだと思いました。
あのプレッシャーのなかでスギちゃんに優しくするというのは、相当ハードルが高い。でも、それと向き合っている方々を描く作品ですから、「私にはできない」と言って、他人事にしてしまうことはできない。