記者も危うかった「アルコール依存症」。飲んだ翌日の要注意“サイン”
飲み会ですっかり酩酊した翌日に「失言をしたのではないか」「醜態を晒したのではないか」と、無性に心配になった経験はないだろうか? 私はここ数年、飲み会の後は毎回のように不安と後悔に苛まれ、しばしばLINEで参加者に何げなく探りを入れてみたり、謝罪メッセージを送りつけたりする。
私を悩ますこの症状。ネットで検索してみたところ、どうやら“ハングザイエティ”と呼ばれる症状らしい。数年前の一時期、関連記事がいくつか見つかるくらいだが、程度の差はあれ、お酒を飲む多くの人が似たような経験をしているようだ。
今回はこころと眠りのクリニック 成増の院長・澤田法英氏にアルコールとの上手な付き合い方を相談した。
ハングザイエティの正体とは
「我々のクリニックはアルコール依存症を専門としたクリニックではなく、心療内科(精神科)のクリニックなので、アルコールの問題を主訴にいらっしゃる頻度は少ないです。しかし、うつや不安症状が主訴でいらっしゃる患者様にお聞きしてみると、アルコールを飲みすぎている状況、それに伴う精神症状が見られます」
そもそもハングザイエティ(hangxiety)とは、二日酔い(hangover)と不安(anxiety)の2つの言葉の合成造語。精神症候学的な用語ではないようだが、医学的な分類としてはどんな位置付けになるのだろうか?
「精神医学としては、『飲酒後の罪悪感』『離脱症状』という位置づけになるかと思います。アルコールを乱用している方は、飲酒後に飲みすぎたことで人間関係のトラブルなどになって反省したり、罪悪感を感じたりすることがあります。
また、アルコールの服用中は一時的に気分を高揚させる薬理学的な作用がありますが、アルコールの血中濃度が下がった時には、不安や焦燥感が出現するなど離脱症状が起きる。これがハングザイエティに近い状態でしょう」
ハングザイエティは女性を悩ませる症状?
ハングザイエティはまだわからないことも多い。「女性を悩ませる症状」として紹介する英国メディアの記事もある。ひと昔前からキッチンドリンカーの問題も耳にするが、性差はあるものだろうか?
「昔から依存症は中年の男性に多いという厚生労働省の発表があり、男性に多いことに変わりはありませんが、最近は若い女性の依存症が増えていることも確かです。男性のほうが女性より年齢的に若くして発症するという話もありますが、性差はないという意見もあります」
厚生労働省の健康情報サイト「eヘルスネット」にはアルコール依存症の危険因子として、
(1)女性のほうが男性より短い期間で依存症になる。
(2)未成年から飲酒を始めるとより依存症になりやすい。
(3)遺伝や家庭環境が危険性を高める。
(4)家族や友人のお酒に対する態度や地域の環境も未成年者の飲酒問題の原因となる。
(5)うつ病や不安障害などの精神疾患も依存症の危険性を高める。
と紹介する。依存症に関してはジェンダー的な要素だけでなく、社会的な環境の影響が大きいということかもしれない。