バイデン政権の船出は前途多難。トランプ信者とコロナを制御できるか
地元デラウェア州の病院で、米製薬大手ファイザー製ワクチンを接種する様子をテレビで生中継した民主党のジョー・バイデン次期大統領。パフォーマンスはさておき、正式な政権発足に向け、着々と準備を進めているようだ。若手ビジネスマンも知っておくべき「アメリカ次期大統領の船出」について、国際政治学者の筆者が解説する(以下、イエール佐藤氏寄稿)。
いまだに根強いトランプ支持
バイデン氏は、ホワイトハウス人事でもその特色を前面に押し出している。国際協調、多様性を強調し、副大統領には女性でインド出身の母と黒人系でジャマイカ出身の父を持つカマラ・ハリス氏を、国防長官には黒人のロイド・オースティン氏を、厚生長官にはヒスパニック系のハビアー・ベセラ氏をそれぞれ就任させる予定だ。
だが、今はいいムードかもしれないが、バイデン政権の国際協調や多様性が機能するかどうかは現時点では全く不透明であり、前途多難であるといえよう。
そう思われる要因のひとつが今年2020年のアメリカ大統領選挙の結果だ。
バイデン氏の獲得票数は8000万票を超えたが、共和党のドナルド・トランプ大統領も約7380万票。投票率が高かったので、両者とも2008年に民主党のバラク・オバマ前大統領が記録した6950万票(歴代最多)を上回る結果になり、トランプ氏は2016年に自身が獲得した票数6200万票から1000万票以上も増やしているのだ。
共和党候補でトランプJr.も人気に
その結果を裏付けるように、米国の政治専門メディア「Politico(ポリティコ)」は2020年11月下旬、2024年の米大統領選挙における共和党候補は誰が相応しいかを問うアンケート調査を実施したところ、トランプ大統領が最も高い53%の支持を集めたと発表した。
他の主な候補者ではマイク・ペンス副大統領が12%、トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏が8%となったが、大統領選に敗北したトランプ大統領が依然として根強い人気を誇っていることが明らかになった。
こうしたなか、2020年大統領選挙の際に活発な活動を見せた「プラウドボーイズ」や「ミリシア」といったトランプ大統領を支持する極右勢力も依然として活動している。バイデン氏の大統領就任式である2021年1月20日が近づくにつれ、2020年11月3日の大統領選挙の際と同じように活動を活発化させる可能性もある。