英語をスラスラ話そうとする人が見落としている発音問題
「ネイティブスピーカーのようにきれいに英語を発音できたら」と思ったことはありますか?
「なかなかRとLの聞き分けができない」「SとThの発音が難しい」という悩みはあるでしょうか? 英語の上手な人に「どうすれば発音が上達しますか?」とアドバイスを求めたことはありますか?
第45回 うまく発音できない悩みに
きっと多くの人が似た悩み、希望、願いを持っているのではないでしょうか? 私は幸運なことに小学校に入った頃から英会話学校に通う機会を両親から得て、また15年以上にわたってアメリカに住んでいることから「日本で生まれ育った英語を外国語としてしゃべる人」としては発音は決して悪くはありません。
アメリカのみならず他の英語圏の人々や、英語を外国語としてしゃべる人と話をしていても、私の発音のせいでコミュニケーションが成立しないということもありません。
ネイティブスピーカーからは「あなたにはアクセントがないね」と言われることもあります。しかし英語のネイティブスピーカーである私の妻やその家族からはもっと素直に、「特にやっぱりアクセントが出るね」と言われます。これは外国語として言語をしゃべる者にとって超えることのできない壁があるからでしょう。
しかし、だからと言って悲観することはありません。日本語だって、色々なアクセントや発音があります。東北や北海道に住む人々の日本語と、九州や沖縄の人々の日本語には違いがあります。
「この発音が唯一正しい」は存在しない
フランス語であれば、フランス、ベルギー、カナダといった国では発音が大きく違います。カリブ海の地域、アフリカの国々でもフランス語のネイティブスピーカーがいますが、やはり発音は違います。英語はそれ以上の規模で国際語です。「この発音が唯一正しい」ということは決してできません。
私が会議通訳者として日本語を英語に訳す場合、私の英語を聞いている人々の多くは英語のネイティブスピーカーではありません。私が英語を日本語に訳す場合、ネイティブスピーカーの分かりやすい英語を訳すことは50%もないのが実情です。
MotherとFatherの「ア」には違いがあります。WonderとWanderの「ア」も違います。発音記号を見ると違いは一目瞭然。「Riceを注文したらLice(シラミ)が出てきた」なんていう話は笑い話にはなりますが、現実的ではありません。正直なところ、通訳をしていて「発音テストなら落第点かも」と思うスピーカーに出会うこともあります。