「あの会社は、悪い意味で飲み会ネタには困らなかったですね…」

　武田智さん（仮名・27歳）が去年まで働いていた会社は、社員80名前後のアットホームな企業。しかし、飲み会にまつわるトラブルは尽きなかったと言います。印象的だったエピソードを紹介してもらいました。

会社の30周年記念の飲み会で事件が

「一般的なアルハラは上司が部下に酒を強要するイメージ。女性の抱きつき魔は初めて見ましたが、あれも完全にアルハラの一種ですね」

　半年前に転職してきた女性（42歳）は、商品の在庫管理や発送作業の責任者ポジション。どちらかというと厳しめのタイプで、無理な納期で受注した営業社員を叱っているのがしばしば見られたそうです。

「今まで飲みの場に来ることはありませんでしたが、会社の30周年記念の飲み会にはその女性も参加。中盤、その女性が僕に『ちょっとそこ、お邪魔してもいい？』と言ってきたんです。話のつまらない総務部長の横に座らされていたため、正直助かったと思って、僕は席を譲って端のほうに移動しました」

　どうやら彼女は、自分を採用してくれた部長にお礼を言いに来た様子です。

「『ありがとうございます』と部長の手を取り、お辞儀をするあたりまでは良かったのですが…」

「雇ってくれてありがとうございます！」

　お酒が回ってきたのか徐々にスキンシップが激しくなっていき、最終的には部長を正面からハグするまでに。

「部長！ 私を雇ってくれて本当にありがとうございます!!」と叫び、抱きついたままなかなか離れない女性。周囲が止めに入りいったん離れてたものの、またしばらくするとハグしようとする、の繰り返し。

　総務部長もどうしていいか分からず、愛想笑いを顔に貼り付けたまま地蔵のようにずっと固まっていました。

「結局そのまま潰れてしまったその女性を、仕方なくその総務部長がタクシーで自宅まで送って行ったんです。しかし女性はほとんど記憶を飛ばしており、次の日、総務部長に『部長、私になにかしました？』と言ったらしいです」

　最終的には、飲み会の様子を面白がって録画していた若手社員に動画を見せられ、青くなって謝りに行ったとのこと。