ビジネスシーンにおいて、適切な言葉遣いは重要なスキルのひとつ。基本的なビジネス用語を理解していることは、コミュニケーションの円滑化に直結します。本記事では、いまさら人に聞けないけれど、知っておきたいビジネス用語をわかりやすく解説。それぞれの用語が持つ背景や使用されるシチュエーションを押さえておくことで、職場での会話やメールに自信を持てるようになります。今回は「キャズム」について、その意味や理論を紹介します。

「キャズム」とは、新製品や技術が市場に普及する際に発生する大きな溝

キャズムは、「深い溝」を意味する言葉で、新しい製品や技術が市場に普及するまでに越える必要がある大きな障害、乗り越えるべき溝のことを指します。また、これを乗り越えることが市場を開拓する上で重要だとするキャズム理論は、著書『キャズム』（原題　Crossing the Chasm）の中で、ジェフリー・ムーア氏が提唱したものです。

理解しておきたい「イノベーター理論」

キャズム理論について知る上で理解しておきたいことに「イノベーター理論」があります。この理論は、新しい製品や技術がどのように市場に普及していくかを理解する際に重要であり、マーケティング戦略や事業戦略の立案に広く活用されています。

イノベーター理論では、新しい技術や製品が市場に浸透していくプロセスを、消費者の「新しいものを受け入れるスピード」、つまり受容度に基づいて5つのグループに分類します。そのグループは具体的に下記のようになっています。

イノベーター（2.5%）

新しい技術や製品をいち早く試す層のことです。価格や実績に関係なく、好奇心や先進性を重視して購入するのが特徴です。

アーリーアダプター（13.5%）

製品の価値を素早く見抜き、比較的早い段階で導入する層のことです。イノベーターよりは慎重ですが、新しいものに対する感度は高いのが特徴です。

アーリーマジョリティ（34%）

新しい技術や製品に関心はあるものの、慎重な判断をする層です。信頼性やコストパフォーマンスを重視し、他の人の動向や市場の評価を見ながら購入を決めるのが特徴です。

レイトマジョリティ（34%）

市場の大半が導入した後、ようやく購入を決める層です。リスクを嫌い、新しい技術に対して消極的なのが特徴です。

ラガード（16%）

新技術や新製品に対して最も慎重な層です。既存の製品や従来の方法に強いこだわりを持っており、基本的に新しい製品を最後まで避けるのが特徴です。

イノベーター理論とキャズムの関係性

イノベーター理論では、新技術や製品が「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティ」へと広がることで市場に浸透するとされています。新たな製品やサービスが爆発的に浸透し、成長していくためには市場の84%を占めるメインストリームへ普及することが不可欠です。

しかし、「新しさ」を重視するアーリーアダプターと「信頼性」を重視するアーリーマジョリティでは、その価値観が大きく異なります。多くの製品や技術は、この2つの層の間にあるキャズム＝溝や大きな壁を越えられず、失敗に終わることが多いとされています。

そして、キャズム理論は、このギャップに着目し、いかにアーリーアダプターからアーリーマジョリティへと普及させるかを考えるための戦略を提示しています。

キャズムを越えるために必要なこと

キャズムを越えることができなければ、製品やサービスを爆発的に普及させることは難しいといえます。では、どのような対策をすればキャズムを越えられるのでしょうか。

まずは、製品やサービスに実績があり、使いやすく、信頼性が高いことをアーリーマジョリティに適切にアピールすることが重要です。また、サポート体制を充実させていくことも有効でしょう。

そして、アーリーマジョリティは、「この製品は本当に役に立つ」という証拠を求めるケースが多いため、導入事例を公開したり、よい口コミを確認しやすい仕組みを整えることも効果的です。

このように、アーリーマジョリティの不安を解消し信頼性の高さをアピールできれば、キャズムを越えてメインストリームへの普及を目指せるでしょう。

キャズム理論の理解が市場への普及に不可欠

新製品や新サービスの提供のマーケティング手法の確立や、市場への普及のために欠かせない概念が、キャズム理論です。少し複雑な考え方ではありますが、理解して市場ニーズや購買層の求めることを把握することで、キャズムを越えて新製品やサービスを広く受け入れてもらえるようになるはずです。