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【世界の働き方事情・イギリス】終身雇用の概念ゼロ!転職でチャンスをつかむ働き方

コラム

世界の働き方事情・イギリス1

海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、イギリスの職業事情を現地でフルタイムで働くワーキングペアレンツライターが紹介します。

イギリスの就労基礎データ

イギリスは総人口が日本の半分程度の約6,800万人、就業者人口は約3,200万人となっています。また失業率は4.6%と決して低くないのが現状です(2020年時点)。

ただし、2020年のEU脱退(ブレグジット)や直後に起きた新型コロナウイルスのパンデミックなどの影響が現在も大きく、常に特に教師や医療スタッフなどの労働者不足が続いています。就労人口別に見ると、第一次産業はたったの1%、第二次産業は18%、第3次産業は81%となっています。

イギリスでも人気職業はスポーツ選手とインフルエンサー

Silhouette of soldier with United Kingdom flag on background of sunset. Greeting card for Poppy Day, Remembrance Day. United Kingdom celebration.

Image : Shutterstock.com

イギリス人の7歳から11歳の児童を対象にした「なりたい職業」では、図らずも日本にも当てはまる結果となりました。

男子に人気の職業トップ10
1位 スポーツ選手
2位 SNSなどのインフルエンサー
3位 警察官
4位 軍人
5位 科学者
6位 エンジニア
7位 医師
8位 教師
9位 獣医
10位 整備士

女子に人気の職業トップ10
1位 教師
2位 獣医
3位 スポーツ選手
4位 医師
5位 芸術家
6位 音楽家
7位 美容師
8位 科学者
9位 ダンサー
10位 看護師

イギリスらしい点としては、男子の人気職業に「軍人」が入っていることでしょう。イギリスでは軍人が古くから大変尊敬されています。また、徐々にジェンダーによる役割の固定化概念の撤廃が進んでいるイギリスでも、男子はより早い段階から科学者、エンジニア、医者などの理系、専門職系により興味を示す結果となっています。

出典のBBCの記事では、貧困家庭の多い地域ほど女子には美容師が人気など、社会的な格差も小さなころから見受けられると指摘しています。日本と変わらず、スポーツ選手、YouTuberなどのインフルエンサーも、やはり大人気なのは納得ですよね。

イギリスの平均年収は821万円

2022年のOECDのデータによると、イギリスの平均年収は5万4,891ドル(約823万円、1ドル=150円換算)で世界第18位となっています(ちなみに日本は25位、4万3,228ドル)。

実際にイギリスに住んでいると「こんなに平均年収高いかな?」という肌で感じる感覚とは違うのが正直なところです。稀に見る円安の影響もあり、物価が非常に高く感じることと「低所得、子だくさん」という暮らしの苦しい家庭も多くいるのが現状な気がします。

また、給料は年俸制で基本的にボーナスがある会社や組織は少ないです。もちろん、車産業、ITなど売り上げがよかった年は1年に2回程度ボーナスがある業界も存在しますが、その一方、公務員や学校の教師、医療従事者、介護系スタッフなどにはボーナスはありません。年俸の1カ月分(12分の1)が月末の火曜日に支払われるというのが一般的なスタイルです。

労働者を守る最低賃金

20歳以上の労働者に対する最低賃金は現在11.44ポンド(約2,300円)となっています。スーパーマーケットの店員、ウェイトレス、ファストフード店の店員などでパートタイムを含め働く人は、最低時給およそ2,300円が支払われることになります

終身雇用の概念ゼロ!転職でキャリアアップを狙う

イギリスでは「終身雇用」という概念がまったくありません。そのため1〜5年程度で経験を積み、その経験やスキルを売りに、より条件のよい会社や仕事に転職する、というのがイギリス流のキャリアアップの方法です。大学卒業直後の20代から50代のトップ職でも同様です。

仕事に関しても会社や公的な機関に勤める際には、パーマネント(期限付きでない、終身雇用)契約と2-5年程度の期限付きの仕事があります。パーマネント契約のほうが急いで次の仕事を探さなくてよいという安心感はありますが、常に会社の倒産、合併、リストラが起こり得るイギリスでは、パーマネント契約だからといって定年退職まで仕事があるとは安心できません。

選択肢やチャンスも多いといえますが、自分の将来は自分で決めなければいけないというのがイギリス的な働き方といえます。

[参考]
基礎情報:イギリス|労働政策研究・研修機構(JILPT)
Children in poorer countries have higher career aspirations than UK
Average annual wages|OECD
最低賃金、2024年4月より11.44ポンド(イギリス:2023年12月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

[文/フレッチャー愛]

20代のころからイギリス在住。科学者。フットボールに夢中な男の子の母親として奮闘中。ヨーロッパ各地のマーケット(蚤の市)散策、ワイン、見晴らしのよい絶景スポット、特に海が大好き。世界のどこにいても、毎日を気楽に楽しめるヒントを共有していきたいです!

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