副業を始めると、生活や仕事のスタイルが少しずつ変化していく。軌道に乗れば、人生が大きく変わる可能性もある。起業や副業を考えている方の支援を行っている「起業・副業EXPO」に出展している副業の先輩たちに、副業を続けることで起きた変化や未来の展望を聞いた。最終回となる今回の記事では、副業を始める前の心構えについても紹介する（3回シリーズの第3回）。

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副業がもたらすキャリアチェンジ

海外輸出事業を手がける合同会社エリミノ代表の狩野壮太郎さんは、薬剤師として働きながら副業を始めて現在に至る。副業を通じて得た経験と変化について次のように語った。

「場所にとらわれずに生活やビジネスができるようになったことは大きな変化ですね。一般的に薬剤師という仕事のキャリアは、進む道の選択肢が多いとは言えません。そのような中で、私の経歴に興味を持って話しかけてくださる方がいたり、経営の話ができる友人が増えたりして、今までにはない人間関係が広がっています」

狩野さんの経験は、副業が新たな世界を開き、キャリアの幅を広げる可能性を示している。

「売れるプレゼン資料を作る人」として知られる中森学さんは、ライターとしてのキャリアを積み重ね、現在はチームを組んで仕事を行っているそうだ。仕事のスタイルの変化や今後の働き方の未来について次のように語った。

「チームには、専業のライターさんもいれば、副業として働くライターさんもいますし、デザイナーさんもメンバーとして仕事を進めています。さらに、依頼元の社員の方も加えると、立場や職種、働き方が全然違う人たちが集まって、一つの仕事に取り組むことになります。もし副業や起業をする人がもっと増えたら、社会的にも仕事の進め方は大きく変わってくるかもしれませんね。同じ会社の中で、上司が部下に無理に言うことを聞かせるような、いわゆるパワハラが減ってくるのではないでしょうか」

副業や独立を通じて、より柔軟で健全な働き方が広まるかもしれない。

スタートを切る前に大事にしたいのは足元

副業を始める理由は、人それぞれだ。収入を増やすことが目的の人もいれば、将来は狩野さんや中森さんのように独立を見据えている人もいるだろう。経営者のセミナー支援などを行うオブリガード株式会社代表取締役社長の中野光裕さんは、本業でマネジメントスキルを身につけておく重要性を説く。

「会社員時代は面倒くさいと思っていた規則や契約書の作成が、独立してからはとても重要だとわかりました。自分に不利益にならないよう、契約書をしっかり読める能力は非常に大切です。会社が組織として10年、20年、30年と存続しているのには、それなりの理由があります。その仕組みやノウハウを自分のものにしておくと、後で役に立ちますよ」

足元にある現在の仕事で得られる経験が、将来の副業や独立の際に大きな資産となることを示唆している。副業を始めることで、今までとは違った視点で本業を捉え直す機会になりそうだ。

最後に、副業を始める前に確認してほしいことがある。

Amazon物販コンサルタントでEC STARs Lab.（イーシースターズラボ）運営責任者の中西恒太さんは、副業を選ぶ際の心構えについて、自身の経験を踏まえて次のように語った。

「『正面から胸を張って人に言えるかどうか』ということは、副業を始める前に過去の自分に伝えたいことですね。お金を第一に続けると、自分がやっていることが正しいことなのかわからなくなってくるんです。家族がいる人であれば、パートナーやお子さんに自信を持って話せる副業を選んでほしい。仮にお金を稼げたとしても、それだけでは長く続けられないと思います」

副業を始めることで起こる変化は、自分だけでなく、時には同僚や家族の人生にも関わってくる。副業は確かに追加の収入源となり得るが、それ以上に人生を変える可能性を秘めている。

きっかけや目的は人それぞれだが、どうせやるなら、本業と副業で相乗効果を生み出し、自分だけでなく身近な人との関係性も大事にできるような仕事をしていきたくはないだろうか。

取材協力：起業・副業EXPO