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「空飛ぶクルマ」は100年に一度の移動革命!大阪・関西万博で見られる新移動手段

ビジネス

2025年に開催される大阪・関西万博では、パビリオンだけでなく会場の至る所で未来の生活を垣間見ることができる「未来社会ショーケース」というプログラムが展開される予定です。その中で取り上げられているデジタルやバーチャルといったよく聞くキーワードの中でも特に注目を集めているのが、100年に一度の移動革命として紹介される「空飛ぶクルマ」です。この展示では、革新的な技術を用いた新しい移動手段がどのように私たちの生活を変えるかを示しています。

今回は、航空ジャーナリストの北島幸司さんが、未来の移動手段として注目の「空飛ぶクルマ」について解説します(以下、北島幸司さんの寄稿)。

日本のスカイドライブの挑戦

SkyDriveの機体 ©SkyDrive

SkyDriveの機体 ©SkyDrive

「空飛ぶクルマ」の開発において、唯一の日本企業「スカイドライブ(SkyDrive)」は重要な役割を果たしています。愛知県豊田市で開発を進める同社は、もともと大阪・関西万博で商用飛行を計画していましたが、現段階ではデモ飛行に変更しました。この決定は技術的な課題や規制上の問題を解決するための一時的な措置とされています。しかし、デモ飛行自体も多くの注目を集め、未来の可能性を示す重要なステップとなっているのです。

外資モビリティ企業の進展と日本のパートナーシップ

一方、外資系のモビリティ企業は、まだ商用飛行を諦めていません。欧米を中心とした企業は、技術開発と規制緩和に向けた取り組みを進めており、商用化に向けた道筋を着実に歩んでいます。

特に、万博協会で認定を受けた4事業者のうちアメリカの「ジョビーアビエーション(Joby Aviation)」やドイツの「ボロコプター(Volocopter)」、そしてイギリスの「バーティカルエアロスペース(Vertical Aerospace)」は、実際に商用飛行を実現するためのテスト飛行を行っており、これらの企業の動向にも注目が集まっています。日本名の「空飛ぶクルマ」は海外では「アドバンストエアモビリティ(AAM)」などと呼ばれます。

ジョビーアビエーションとANAの連携

Joby AviationのS4 ©Joby Aviation

Joby AviationのS4 ©Joby Aviation

アメリカのジョビーアビエーションの「S4」は、6つのモーターを使った機体で、これまでに数多くのテスト飛行を行ってきました。2024年に商用サービスを開始することを目指しており、すでにFAA(アメリカ連邦航空局)からの認証取得に向けたプロセスを進めています。特筆すべきは、ANAとのパートナーシップで、ANAはジョビーの技術を活用して国内でのエアモビリティサービスの実現を目指しています。

ボロコプターとJALの協力

Volocopter のVoloCity ©Volocopter

Volocopter のVoloCity ©Volocopter

ドイツを拠点とするボロコプターは、シンプルで安全なAAMである「ボロシティ(VoloCity)」を開発中です。彼らの機体は、18個の小型ローターを持つことで安全性を高めており、都市部でのエアタクシーサービスを想定しています。すでに大阪などを含め複数都市でデモ飛行を成功させており、商用サービスの開始に向けた準備を着々と進めているところです。JALもボロコプターと提携し、国内での運用に向けた調査と計画を進めています。

バーティカルエアロスペースと丸紅の投資

Vertical AerospaceのVX4 © Vertical Aerospace

Vertical AerospaceのVX4 © Vertical Aerospace

イギリスのバーティカルエアロスペースは、最先端の航空技術を駆使して「VX4」の開発を行っています。彼らの機体は、高い効率性と環境への配慮を特徴としており、持続可能な未来の移動手段として期待されています。アメリカン航空から350機の予約注文を受けるなど、すでにいくつかの航空会社と提携し、商用サービスの実現に向けた具体的な計画を進行中です。日本では丸紅が出資しており、JALも100機発注するなど日本市場への参入を視野に入れた戦略的な動きを見せています。

空飛ぶクルマの実現に向けた課題

「空飛ぶクルマ」が実際に普及するためには、技術的な問題だけでなく、法規制やバーティポートと呼ばれる離発着場などのインフラ整備のほか、多くの課題があります。例えば、空中での交通管理システムや安全基準の確立が不可欠です。また、騒音問題や環境への影響も考慮しなければなりません。

各企業はこれらの課題に対処するための研究開発を進めており、業界全体での協力も重要です。紹介した4社ともに日本の航空局(CAB)への型式証明が申請済であり、承認待ちとなることから、日本の空が変わるのも近い将来となってきました。

未来社会の実現に向けて

大阪・関西万博の「未来社会ショーケース」は、こうした課題に挑戦する企業や技術を紹介する場として非常に重要です。万博を通じて、未来の生活がどのように変わるのかを具体的にイメージすることができ、多くの人々に夢と希望を与えることでしょう。

「空飛ぶクルマ」の実現は、単なる未来の夢ではなく、実現に向けた具体的なステップが進んでいます。今後も技術の進展とともに、私たちの生活がどのように変わっていくのか注目していきたいと思います。

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「あびあんうぃんぐ」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram @kitajimaavianwing

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