警察から「感謝状」をもらえる条件とは?もらう方法はある?
犯罪を未然に防いだり、火事などの際に人を助けたりした一般人が、警視庁から感謝状を贈呈されたというニュースを見かけることがある。そもそも感謝状はどのような条件でもらえるのか。またもらう方法はあるのか。かつて警察の警部だったことがあり、現在は一般社団法人日本刑事技術協会の代表理事を務める森 透匡氏に話を聞いた。
目次
感謝状をもらえる基準
警視庁の警察表彰取扱規程によれば、一般人は「部外表彰」を受けられると定められており、部外者または部外者の団体の表彰は、次の4つのいずれかにあてはまり、警察に対して特に協力したと認められるものについて行われるとされている。
(1)犯罪の予防、鎮圧、捜査又は被疑者の逮捕に関する協力
(2)水火災その他の災害又は変事における警戒、防護若しくは救護に関する協力
(3) 人命救助
(4)前各号のほか、警察上重要な事項に関する協力
この規程は警視庁によるものだが、全国の道府県警察にも同様の規程があると森氏は述べる。
「基本的には、警察上の功労があると認められる部外者、またはその団体に対して行う表彰であり、具体的には、発生した事件で現行犯逮捕に協力した、災害で人命を救助した、特殊な技術で捜査協力をした場合など様々なケースで感謝状を授与することにより表彰しています」
賞状以外にもらえるものはあるのだろうか?
「表彰には、副賞金または副賞品を附与することができると規程がありますので、感謝状と合わせて粗品程度の賞品を授与する場合があります」
表彰を受けられるかどうかはどう決まる?
部外表彰を受けられるかどうかは、どのように決まるのか。自身で申請する必要はあるのだろうか。
「部外表彰については、警察内部で検討します。感謝状を贈るべき事案を認知した警察署などの担当係が、根拠となる事件や事案の資料などを付け、『表彰上申』として申請します。従って、表彰を受ける当事者が申請をする必要はありません。
感謝状を贈ることが決定すると、警察から当事者に対して『〇〇の件で感謝状を贈りますので、来署してください』といった連絡が来て、警察署に赴き、警察署長などの所属長から贈呈を受けるという流れになります」
いいことをしたのに感謝状をもらえないケースはある?
ところで、「自分はいいことをしたのに感謝状をもらえなかった」というケースはあるのだろうか?
「いいことの判断基準はあくまで警察の規程と、過去の事例などで判断することになります。例えば『財布を拾って届けた』などの場合は確かにいいことですが、件数も多いので残念ながら感謝状を贈るべき事案には該当しません」
感謝状は何の役に立つ?
実際、自分自身が感謝状をもらったとしたら、それ自体が誇れることであり、嬉しいものだ。その感謝状、もらった後はどんなことに役立つだろうか。
「警察からの感謝状はなかなかもらえないので、喜ばれる方が多いと思います。個人の場合は、額に入れた感謝状を自宅に飾ったり、企業・団体の場合は事務所に飾ったりする場合があるでしょう。感謝状があることで、企業や個人の信用力が上がることはあるかもしれませんが、他のことで役に立つかどうかは定かではありません」
民間企業が犯罪捜査の協力により表彰を受けるケースも
近年、民間企業は、警察の捜査に協力することでも表彰を受けているそうだ。
「近年の犯罪は複雑化、巧妙化しているため、犯罪捜査において民間企業の技術を利用して事件解決しているケースも多くあります。
私の知人で、デジタルデータの復旧や解析を専門とする企業の社長は、自社の技術を活用した捜査協力により、幾度となく警察署から感謝状を贈呈されています。警察も事件解決できるならば、民間の技術を活用しているという良い事例だと思います」
もし、この先の人生において感謝状をもらえる機会があれば嬉しいものだ。どうしてももらいたいという場合は、デジタル技術を開発して起業するなどして捜査に協力するという道もあるのかもしれない。
<取材・文/一ノ瀬聡子>
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【取材協力】
森 透匡氏
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事
警察の元警部。一般社団法人日本刑事技術協会の代表理事として「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180か所以上で「ウソの見抜き方」を主なテーマに講演・企業研修を行う。メディア出演も多数。
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