少子化対策は投資ではない?「異次元の少子化対策」にお金が使われない根本的な理由
防衛は投資で少子化対策は投資じゃない
それでは、防衛費増額やオリンピック開催などに対しては、財源について時間をかけて議論しないのはなぜだろう。藤井氏は「オリンピックは一回きりですが、少子化対策は“恒常的予算”になりますので、“財源論”が起こりやすいです」と説明。
「防衛費も“恒常的予算”になるため、『財源をどうするか』は一応は議論されており、増税も含めていろいろ検討されています。とはいえ、“防衛”については“投資”の概念が含まれます。『国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。 但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる』とする財政法四条の視点から、一定程度の国債発行が法的に認められます」
ただ、少子化対策も立派な投資ではないか。「確かに少子化対策での国債発行は、現在の財政法の視点からも正当化されるべきです。ただ、財務省はそういった“拡大解釈”を忌み嫌います。少子化対策だけでなく、本来投資と考えられるべきものも含め、国債発行は徹底的に忌避されているのです」と語った。
消費税減税で婚姻率は上がる
少子化対策に話を戻す。少子化を脱するために必要な政策を聞くと、「女性の若年婚姻率(出産適齢期の婚姻率)の上昇対策が最も効果的です」と回答。
「そのためには、若年女性の所得拡大策、ならびに若年女性の結婚対象者となる男性の所得拡大策が必須です。過去のデータからも、婚姻率は所得と強い関連があることが知られています。言い換えれば、低所得者は婚姻できるチャンスは低く、高所得者は婚姻できるチャンスが大きいのです。
所得拡大のために最も効果的なのは、消費税減税や社会保険料率などを引き下げることで、直接的に実質所得や可処分所得が上がります。同時に、消費に回せるお金が増えることにより、経済成長がもたらされ、賃金の上昇率もより拡大するでしょう、そして、ますます結婚適齢期の男女の可処分所得が拡大し、婚姻率は確実に上昇します」
さらには、「経済成長が実現できれば、将来に期待が持てるようになり、早期結婚をする人達も確実に増えます」と空気を変えることも期待できると話した。
まず関心を持つことが大事
最後に岸田内閣が本気で少子化対策に取り組むようになるために、私達国民がすべきこととして、「岸田内閣の対策がいかに無駄であるかを理解することです」と答える。
「それが理解できれば、政府に正しい対策を迫る圧力が高まり、正しい対策ができる政党や政治家が権力を握る可能性が高まり、正しい対策に舵を切る可能性が上がります。裏を返せば、少子化対策に関心を抱かなければ、正しい対策ができる政党や政治家が権力を持てません。その結果、人々にとって子供はどんどん「贅沢品」となっていってしまうと同時に、大人達の子育て世帯や子供に対する寛容さが徐々に社会から失われていき、子育てがより難しい、という状況になっていくでしょう」
経済的な理由から「結婚したくてもできない」「子供を持ちたくても持てない」という人が少なくない現状はとても看過できない。岩本氏ほど鋭い視点を持つ必要はないが、それでも政府の少子化対策には目を光らせておきたい。
<取材・文/望月悠木>
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