「いきなりタメ口」「今どきこんな不遜な若者いない」それでも人気脚本家が彼らを応援する理由とは?
「なぜ古着屋なのか」「なぜ松陰神社前なのか」
――須藤さんはタメ口を叩くことで「俺にも高い場所からの景色を見せてくれ!」と必死に訴えていた、というわけですね。
須藤:あやさんのような一流のクリエイターたちの視点や考え方を盗んで自分なりに実践することで、同世代の若者たちにもそのスピリットをシェアしたい。「社会を楽しく、激しめに変化させていく」のが僕のモットーなので。「FOL SHOP」も単なる古着屋ではなく、ジャンルを超えた活動を通して映画の可能性を掘り起こす<映画の未来を切り拓くプロジェクト>=「FOL(Fruits of Life)」のアンテナショップであり、そこで行うイベントや対話を通して自分らしく生きるための場所になればいいなと思っているんです。
――「なぜ古着屋なのか」「なぜ松陰神社前なのか」という点について、もう少し詳しく伺えますか?
須藤:『逆光』を自主配給・宣伝するなかで出会い、大学や仕事を辞めて僕らの仲間になったスタッフが、映画制作をしていない期間も働ける場所を作るというのが最初のきっかけではあるんですけど、僕らのイベントに来てくれる人たちは、僕らと話がしたくて来てくれる人が多かったので、そういう人たちが来たいときにいつでも集まれる拠点が作れたらと思ったんです。『逆光』の衣裳も担当してくれた高橋さんは「ギャラリーをやりたい」と提案してくれたんですが、僕はそれぞれの得意分野が活かせるような場にしたかったので、すでに中目黒で古着屋を経営していてキャリアもノウハウも持つ高橋さんの本業である「古着」をメインに扱うショップをオープンしたんです。
「FOL SHOP」は「ワンダーウォール」の近衛寮
渡辺:人って、自分の思い込みだけで作った「安全な壁」みたいなものを突き破って、思いもよらなかったような新しい見方を獲得できた時に、「すごくいい時間を過ごせたな」と思えるような気がするんです。そういう意味では「FOL SHOP」は、「ワンダーウォール」というドラマに登場した、多様性に溢れていて、混沌とした、“大学の寮”のような場所であるとも言えるのかもしれません。「FOL」という新たな土壌を耕すことで、そこからどんなものが育っていくのかを、私自身も見てみたいというか。
須藤:それこそ、困ったときに相談に乗ってくれたり、面白いことを教えてくれる人たちがいるような場所を、僕自身がずっと求めていたというのもあって。今まで出会ったことのないような面白い人たちと繋がれる場所である「FOL SHOP」に足を踏み入れることで、何か一つでも自分の身になるものを持ち帰ってほしいと思っているんです。
須藤:松陰神社前というニッチな場所を選んだ理由も、“大学の寮”のように人が本音で付き合える場所にしたかったのと、吉田松陰が幕末期に「松下村塾」を開いたことで彼のスピリットを受け継いだ人たちが世の中を変えたように、「FOL SHOP」を拠点とすることで、僕らも共に学び共に成長していけたらという思いもあって。
――渡辺さんが「FOL SHOP」の開店資金を援助したのも、新たなものが生まれる可能性を信じているからなんですね。
渡辺:せっかくなら自分一人では成し遂げられない夢のあることにお金を遣いたいし、思い込みでがんじがらめになっている若い人たちの心が解放されるような、あたたかくて有機的な基地になればいいなと思っているんです。私は、普段島根で主婦をしながら脚本を書いているだけの人生だったので、まさか自分の中に若い人の役に立つものがあるなんて思ってもみなかったんです。でも「ワンダーウォール」という作品を通じてたまたま蓮くんと出会ったことで、良い意味で蓮くんに自分の知見を活かしてもらえている感じがするんですよね。人間誰しも生きているといろんなことがあって、「これは何の役に立つんだろう?」と思いながら日々哀しみや苦しみを乗り越えているわけですよ。そんななか、縁もゆかりもなかった若者たちに自分のなかに無駄に溜まった知見を役立ててもらえるなんて、素敵なことじゃないですか。若者たちが、楽しそうにしていたり生き生きとしていたりする姿を見ると、なんだか勇気がもらえませんか? 「目の前で若い人たちがキラキラしている」。ただそれを信じようと思うんです。
<取材・文・撮影/渡邊玲子>
FOL SHOP
場所:東京都世田谷区若林3-17-11 石田ビル2F
営業時間:13:00〜21:00
Instagram :@fol.fruitsoflife
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