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物価上昇は止まらない…それでも「政府が増税を進める理由」を京大教授に聞く

ビジネス

政府は欧州の税制を参考にしている

 なぜ政府の政策は効果を発揮しないなか、SNSなどで高まっているのが「消費税の減税待望論」だ。仮に消費税を一時停止したり、減税したりすれば、物価上昇のダメージを軽減できる気もするものだが。この疑問に対して藤井氏はこう言及した。

「政府は『消費税率は本来ならば、欧州諸国と同じ20%以上程度の水準が必要』と信じているからです。実際、昨年10月26日に行われた首相が税制に関する意見を求める政府税制調査会で、消費税について議論されたのですが『消費税率はまだ海外に比べると低いので、いつどのような形で上げていくのか……』といった発言があり、欧州の税制を参考にしようと考えているようです

 あるいは『今後欧州のような制度の導入を検討していく段階に差しかかってきているのではないか』『欧州と日本の違いはあるとしても、今後の時代を見通した消費税の在り方に、まずは取り組んでいただくことが大事』といった発言すらありました。政府の目標は日本経済を活性化することでも、ましてや税収を増やして財政を健全化することですらなく、ただただ消費税“率”をヨーロッパ水準に引き上げることなのです

財務省の存在を無視して語れない

消費税

日本の消費税は欧州の付加価値税と異なり、価格に容易に転嫁される税制であり、経済への悪影響は圧倒的に大きい。にもかかわらず、総税収に占める消費税の構成比は、すでに税率が極端に高いどの北欧諸国よりも高い。そんな事実を無視した議論には違和感しか覚えません」

 政府は防衛費増額のために増税の検討も始めているが、生活困窮者が増加するなかでの増税は、火に油を注ぐようなものだ。これに関して、藤井氏は「財務省の存在を無視して語ることはできない」という。

「日本の財務の管理・運営を担っている財務省は、日本経済の活性化や税収拡大を目的としているわけではありません。財務省設置法には、任務として『財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ることを任務とする』と記されています。つまり経済成長は任務には含まれていません

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