「売春島」で元教職員が取り組む“地域おこし”の全貌「知っていたら応募しなかった」
初の地域おこし協力隊は元教職員
2021年4月から来島しているのが、渡鹿野島の「地域おこし協力隊」第1号の峠広之さん(32歳)。島内に生活の拠点を移し、活動している。渡鹿野島へ来るまでは大阪の小学校で勤務。夢だった教職に就けたことや子どもたちの笑顔が見られる日々に満足していたとか。
「けれど、新型コロナ感染症対策のために学校内で消毒などを徹底するようになって授業以外の業務負担が大きくなった頃、持病の潰瘍性大腸炎が悪化。学校側は心配してくれ、担任から外してくれたり、休暇をくれたりと配慮してくれました」(峠さん、以下同じ)
ただ、このまま教職の仕事を続けることは難しいと考えた峠さんは学校と相談。半年ほど教職を頑張りながら仕事を探すことになる。しかし、「コロナ禍で、教職以外は未経験の30代前半を雇ってくれるところはありませんでした」と語る。
「そんなときに見つけたのが、渡鹿野島の活性化をおこなう地域おこし協力隊の募集。応募してみようと思ったキッカケは、田舎暮らしに興味があったこと、そして三重県にある伊勢神宮へ参拝に来ていてゆかりがあったことです」
「売春島」と知っていたら応募しなかったが…
地域おこし協力隊への応募時点では渡鹿野島に足を運んだこともなく、「売春島」とよばれていたことも知らなかった峠さん。「売春島とよばれていた過去を知っていたら、応募しなかったかもしれない」と言いつつ、「変な先入観がなくてよかった」とも回答。
「この島に面接へ来たとき、荒天で帰りの電車が止まる可能性があり、帰れないかもしれないという状況になりました。でも、旅館を経営していた副区長さんが『ウチで泊まったらいいよ』とやさしく声をかけてくれ、食事や着替えも準備してくれたのです」
また、その後しばらくして地域おこし協力隊として来島したときにも、島の人たちはあたたかく迎え入れてくれたとか。そのため、「渡鹿野島に対する負の感情はまったくなく、むしろポジティブな印象しかないです」と話す。