「タワマン修繕費の高騰」でローン破綻者も…2022年の大規模修繕ラッシュで何が/2022年上半期BEST10
修繕工事に必要な足場コストの上昇
タワマンの大規模修繕費が高額になる理由について、修繕を請け負うインクコーポレーション代表の入江尚之氏はこう指摘する。
「項目別で見ると、値上がりが特に顕著なのは足場。足場は通常、建設会社がリース業者から借りてくるのですが、絶対数が決まっているので価格変動が著しく、5割以上も上がっています。足場が高くつくタワマンの修繕費は、この15年で30~35%高騰しました」
入江氏は、足場コストの上昇は今後ますますひどくなると言う。
「厚労省が定める、足場に関する安全基準が年々厳しくなっており、コストを押し上げている。直近では、昨年6月の改正で、これまでより高い手すりの設置が求められるようになった。結果、足場の設置自体により時間がかかるようになり、人件費が上昇しました。加えて、現場作業を担っていた外国人労働者が、コロナで入国できなくなり、人件費はさらに高騰しています」
コロナ禍の影響はほかにもあり、「原油高騰やコンテナ不足で修繕に必要な塗料やタイル、パネルなどの価格も3割増し」(入江氏)になっているとか。
修繕の住民投票をめぐって怪文書も
積立金の不足が引き起こすのは、経済的な問題だけではない。神奈川県内のタワマンに住む、40代の女性によると、不足する修繕積立金に関する議論が活発化した結果、住み心地が悪くなった。
「築8年目のウチの物件では今年、修繕費の値上げに関して全戸対象の住民投票を行うことが決まりました。改定案では1㎡単価が1.5倍の約300円になり、とうてい納得できません。反対派と賛成派それぞれの組合理事が、票の取りまとめに動いているのですが、住民同士の立ち話でも、それとなくどっち派なのか探ってくるような人がいたりと、見えない分断を生んでいる。互いの主張を否定する怪文書や匿名のチラシが投函されてたりして、気味が悪いです」
果たして解決策はあるのか。土屋氏は言う。
「修繕計画の多くは、管理会社が『理想的』に描いた内容。すべてを必ずやらないといけないわけではありません。メリハリをつけた計画にすることで、積立金の残高内に抑えることも可能です」