“飲食経験ゼロ”から繁盛店に。歌舞伎町の「行列ラーメン店」女社長のルーツに迫る
「最大限に焼きあごが主張する味わい」にく
――自分が満足できる味であることはもちろん、「売る」ということは採算も考えながら作らなくてはいけませんよね。
髙橋:その部分にもとても悩まされました。焼きあごは、クセがなくとても上品な味わいです。さらに、煮干しや節などのラーメンによく使われる出汁に比べて、数倍の原価がかかる高級なだしなんです。さらに、煮干しなどのように風味が強いわけではないので、あごの美味しさを十分に出そうとすると大量に使わなくてはいけませんから。
――どのようにして、あごの風味を出しながら一般的なラーメンの価格に抑えられるようになったんですか?
髙橋:焼きあごのうま味や香り成分には、水に溶けるもの(親水性)と、水に溶けないもの(疎水性)があります。それらは性質の異なるものとしてはっきりと区別することができますが、重要なのは、どちらも合わせて本来の「本物の焼きあごの美味しさ」であるということです。抽出過程でこれらの性質を効果的に組み合わせることによって、最大限に焼きあごが主張する味わいに設計することに成功したんです。
今でも改善は続けている
――納得の味が完成したんですね。しかし、売り上げを伸ばすには経営のノウハウも必要です。そこに関しても、ゼロからなんですよね。
髙橋:そうです。1~2店舗のうちは自分の目も求心力も届くのですが、そこからさらに店舗を拡大しようとすると、全く違う考え方を取り入れないといけません。3店舗以上展開するときに、私自身でも「家業から企業へ」ということを意識して、チェーン店理論を勉強しました。また、会社の成長に合わせて、変化に適応できる人材がいてくれたことも、ものすごく「人」に恵まれたなと感じています。
――人に恵まれた一方、展開を広げるには仕組みづくりも必要ですね。
髙橋:創業当時の、何もルールが無いところから、ルールを作っていき、運用しては調整する……を繰り返してきましたし、今でもまだ改善を続けています。
――しかし、複数店舗を広げても、多店舗で品質を「継続」する大変さがありそうですね。
髙橋:そこには、熱量を持った言葉が必要だと思います。なので、従業員に集まってもらって、私自身が私の口から考え方や思いを伝える機会を、今でも月に1度は開いています。信念を持って高い理想を伝えていくことは、リーダーシップの基本だと思っています。