「日本の快進撃だけが心の拠り所」カタールW杯の“大混乱ぶり”、記者が現地で見た
世界最大のスポーツの祭典、カタールW杯。現地の物価高、円安、そして宿泊施設のトラブル、酒の禁止……過去の大会より苦戦を強いられた日本のサポーターはいかに戦っているのか?
“ドーハの悲劇”再び!?一泊3万円の宿で大混乱
「日本から12時間。深夜にドーハに着いて、タクシーでここに到着したのですが、プレハブ小屋の受付を大勢の人が取り囲んでいて、英語で『チェックイン!』と怒鳴っているので嫌な予感がして……」
そう言ってうなだれるのは、日本代表のユニフォームを着た30代の男性。彼は受付裏の試合などが見られるパブリックスペースで中東の強烈な朝日を浴び座り込んでいた。
現在、記者はサッカーW杯カタール大会が行われている中東カタールのドーハ中心部から4kmほど南へ下った「フリーゾーン」という地域にある「ファンビレッジフリーゾーン」(以下フリーゾーン)に宿泊し、連日取材にあたっている。
冒頭の光景は23日、ドイツ戦の当日朝。ここフリーゾーンにやってきた日本人サポーターは半ばあきらめ顔だった。チェックインできず、シャワーも浴びられないまま、荷物だけを預け、午後4時から始まるドイツ戦に向かうという。
大量の「宿泊難民」が発生
このフリーゾーンは、世界各国から集まるサッカーファンのために、カタール政府とFIFA(国際サッカー連盟)が建設した宿泊所だ。ドーハ国際空港の南の砂漠地帯にコンテナを置き、ドーハ市内では到底賄えないホテル不足を解消しようと目論んだものだ。
この大会期間中、ドーハ市内でホテルを事前予約しようとすると、FIFAが一括管理する公式宿泊サイトでは一泊10万円はザラ、なかには一泊100万円を超えるプール付きの高級ヴィラも検索で出てくる始末。観戦チケット代が前回のロシア大会から同カテゴリーで1万円も値上がり(約1.6万円→2.6万円)し、日本人を円安、カタールの物価高が直撃した。
それゆえ、日本人に人気だったのがこのフリーゾーン。ダブルの部屋で一泊約3万円(207ドル)、各スタジアムへと繫がる地下鉄駅が最寄り(とはいっても敷地内を15分は歩く)とあって、利便性と懐、そして予約の取りやすさを鑑みて、ここに宿を構えようとしたサポーターが日本はおろか世界中から押し寄せた。