ストレスや食習慣だけじゃない「円形脱毛症」の原因と予防策を医師に聞く
円形脱毛症は遺伝するのか?
ちなみに円形脱毛症は、遺伝的な体質も関係しているそうだ。
「円形脱毛症の患者さんには、何度も繰り返す方や、親兄弟姉妹で発症する方、一卵性双生児での発症など円形脱毛症になりやすい体質を遺伝的に持っていることが推測される方もいます。基礎研究でも円形脱毛症になりやすい体質の報告もすでにあります。
円形脱毛症になりやすい遺伝的体質を持っている方に、何らかのきっかけが加わることで、毛髪の生成に非常に重要な役割を持つ毛根のふくらんでいる部分『毛球部』に、自己免疫反応が誘導されるのであろうと思われます」
鉄分、亜鉛、ビタミンDを意識的に摂ること
脱毛症は必ずしもストレスが原因とは限らないようだが、「日頃のストレスケアは脱毛症の予防にはなる」と伊藤氏は話す。特に食事や生活習慣については、どのようなことに気をつければいいだろうか。
「食事は、健やかな毛髪を維持するために重要です。特定の食事が円形脱毛症を予防することはないかもしれませんが、鉄分や亜鉛が不足ぎみだと抜け毛が増えるといわれているのです。また、円形脱毛症の患者さんはビタミンDが足りていないという報告もあります。
これらに加えタンパク質など、さまざまな栄養素をバランスよく摂るとよいでしょう。睡眠をしっかりとることですね。睡眠不足はホルモンバランスの崩れ、疲労をきたしやすく、毛周期の乱れを起こしてしまうため、規則的な生活習慣は大切です」
円形脱毛症や脱毛症全般は、必ずしもストレスが原因ではないものの、ストレスがひとつの引き金になることは確かであるようだ。脱毛症予防のためには、ストレスのほか食習慣や規則正しい生活習慣も重要。ぜひ取り組もう。
【調査出典】
円形脱毛症患者調査「円形脱毛症と向き合うプロジェクト」(日本イーライリリー)
<取材・文/一ノ瀬聡子>
【伊藤泰介】
浜松医科大学 皮膚科学講座 准教授・病院教授。1995年に産業医科大学医学部を卒業後、浜松医科大学皮膚科入局。その後ドイツ・ハンブルク大学への留学を経て、2020年より現職である浜松医科大学病院教授に就任。日本皮膚科学会をはじめ、国内の様々な皮膚科領域の学会に所属