50人以上いると泣く?さらば青春の光・森田が驚いた“スーパー投資家”の素顔
300近いスタートアップのプレゼンを聞いた
アレン:当時(2001年)は日本ではネットバブルの黎明期で、楽天、DeNA、サイバーエージェントといった現在のIT大手企業もまだ事業規模は大きくありませんでした。ECやポータルサイトなどの事業を興すために多くの起業家たちが激しく資金調達活動を行っていました。
私は当時、ベンチャーキャピタルを経営していたので「ビジネス」や「儲け」といった視点以外のアイデアを公開する場も、資金を調達して事業を興す場が少ないと感じていました。そんな時、「社会問題を解決する場を提供する」という考えを抱く井上さんが現れたのです。
井上さんと出会うまでに200、300というスタートアップのプレゼンを聞いていましたが、「すごいね」ということはあっても泣くことまでありませんでした。ただ、STYLE初の優勝チームのプランを聞いて、感動して泣いてしまったんです。
アレンが泣いた!ビジネスコンペの内容とは?
森田:また泣いたんですか!? しゃべってなくても泣くんですね(笑)。
アレン:人の話で泣くことは滅多にないんですよ。ただ、そのプランを聞き終わった後、ポロッと泣いてしまったんです。プレゼンのスタイル、内容、人となりなど、まるで素敵な映画を見て思わず泣いてしまうような感覚でした。ピッチを聞いて泣くのは人生で初めてでしたね。
森田:アレンさんが泣いたプレゼンは、どんな内容だったんですか?
井上:起業はもちろん、カフェですら働いたことがない女子大生3人による「オーガニックカフェの開業」です。当時はスローフードが流行り始めた時期でした。「ビジネスで忙しいおじさん達が忙しいままカフェに来店して忙しいまま帰るのではなく、もう少しゆっくりと一杯のコーヒーを楽しんでその背景まで思いを寄せてほしい」という思いが彼女たちの考えでした。
さらにコーヒー自体も「シェールグロウ」という日陰で育てたオーガニック栽培の豆を使用。日陰で育てることで森を伐採せずとも収穫できる品種です。当初、彼女たちは大量生産されている従来の豆の使用を業者から勧められたらしいのですが、それを断り、自然環境と生産者の労働環境を大切にするためにシェールグロウを選んだのです。
その物語を聞き、プロのビジネスコンサルタントがスライドを作ろうと提案したのですが、彼女たちは「パワポができません」といい、手書きの美しい絵を書いてプレゼンの場で流したのです。しかもビジネスプランコンペなのにその場でコーヒーを作りはじめ、アレンさんたち審査員に手渡しました。