“奴隷同然”はホント?「マグロ漁船」の現実を発信する“船主協会TikTok”の想い
ゼロからのスタートでも年収500万
実際に採用されると、どういった働き方になるのだろう。まず気になるのが、経験や資格の必要性について、そして何より収入はどのくらいになるのか。
「この仕事に必要な海技士という資格は、3年以上の実務経験が必要なので、誰でも資格なしから始めます。全くの素人の状態で乗船すると、年収としては500万円前後(水揚げ量による)になりますね」
経験も資格も持たずに、1年目で500万円をもらえる仕事はそうそうない。そこから経験を積み資格を取得していくと、どういったステップアップが待っているのだろう。
「3年仕事をして一等航海士になると、年収は約700万円。そこから2年経験を積むと、資格の限定が外れて船長になるので、900万~1000万円くらいは稼げます。早いと、5年でそのくらい稼ぐようになる人もいますよ」
無駄遣いしなくなるメリットが
この昇給ペースは、一般的な会社では、なかなか手にできるものではない。さらにこの仕事では、貯金しやすい大きなメリットがあると、吉田氏は話す。
「遠洋まぐろ延縄漁船は、出港して10か月は住居も食事も船の上です。つまり、家賃や食費や光熱費がいりません。当然税金などは引かれますが、それ以外の稼いだ分が全て手元に残るわけです。また、お菓子や飲み物をまとめて買って乗るので、これが意外と節約になります。陸上だと、コンビニに寄るたびに無駄な買い物をしちゃいますよね。それが10か月分ともなると、かなりの額になるはずです」
しかし、過酷なイメージのあるマグロ漁船の、労働時間や環境が気になるところではある。
「もちろん過酷な仕事であることは間違いないです。漁場についてからの1日の仕事は、まず5~6時間かけて、150kmある仕掛けを海に落としていき、そこから魚がかかるのを待つ2~4時間は休憩です。その後、仕掛けをあげる作業は13時間ほどかかるので、その日は20時間近く働くことになります。これが3交代なので3日に1度ありますね。その他の日は、揚げた魚の冷凍処理や見張りなどの仕事をします」