<漫画>漫画家の卵が住むシェアハウス。主人公には誰にも明かせない秘密が
ヒリヒリした読後感を生む仕掛け作り
──エピソードの1つひとつが、どれも心がヒリヒリする内容でしたので、うらたにさんの強い思いが色濃く反映されているのかなと。
うらたに:読んで辛くなるというか、しんどくなる部分ほど、「この登場人物に、どんな意地悪な仕掛けをすれば面白くなるだろう」っていう視点で考えてますね(笑)。当事者は辛いんだけど、俯瞰で見ると楽しんでもらえるっていう、ほどよい仕掛けが大事だと思っています。
──そこは、経験よりも計算された創作が重要なのですね。そうした仕掛けがあるからこそ、漫画家志望者ではない方々にも届きやすい作品になるのでしょうか?
うらたに:そう思います。業界のあまり知られていない裏の話や、漫画家入門のような要素で面白さを生み出そうとすると、どうしても“知っている人だけがわかる”というコアな作品になってしまうと思うんです。だから、より多くの方に普遍的に面白がってもらえる部分を意識して描いています。
「こんな人がいいな」と感じられる作品を
──では、漫画家としては、これからどのような作品を手掛けたいという思いはありますか?
うらたに:大前提として、作画をするなら絵をもっとうまく描けないといけないので。修業期間が、まだまだ必要だろうと思っています。だから、原作1本なら野球漫画に挑戦してみたいですね。1度、『未来のエース』で描いたことはあるのですが、また違った形で挑戦したいという思いはあります。
──うらたに作品は、影があったり弱さがあったり、人間味を感じられる人物が特徴だと感じています。その作品には、どんな魅力的な人物が登場するのでしょうか?
うらたに:野球漫画に登場させるかどうかはわかりませんが、今までとは違うキャラクターを描きたいという気持ちがありまして。
──例えば、どういったキャラクターですか?
うらたに:やはり、漫画家として仕事をするようになってから、交友関係も広がって、世の中には良い人もいるんだなって(笑)。数は多くないのかもしれないですけど、いるところにはいるんだなと。だから、安直なヒーローというよりも、ちゃんと人間味を持った美化されたキャラクターを描けるんじゃないかと。
──絵に書いたようなヒーローではなく?
うらたに:そうですね。この人は普段どんな生活をしてなにが好きなのか、それがちゃんと見えてくるようなキャラクター。しかも、これまで描いたことがないような「こんな人がいたらいいな」って、読者の方に思ってもらえるキャラクターが登場する作品を描いてみたいと思っています。
──それは、とても楽しみですね。そうした作品を描かれることを期待しています!
うらたに:物語やネームは瞬発的に作れるので、しっかりと取材や勉強ができるのであれば、ぜひ挑戦したいですね。
<取材・文/橋本未来 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>
【うらたにみずき】
1997年生まれ。専門学校在学中に受賞した第34回イブニング新人賞の奨励賞・編集部特別賞や第81回ちばてつや賞のヤング部門優秀新人賞など、数々の漫画賞を受賞。漫画原作として『アンサングヒーロー』や『カスミ荘の漫画家志望達』(共に、講談社コミックDAYS・ヤンマガWebで連載)などを担当している