昼は鰻屋、夜は居酒屋…「紅とん」が仕掛ける“コラボ戦略”は三方良しとなるか
「うなぎのメニュー」は常連からも好評
スムーズな走り出しとなったのは、スタッフだけでない。「四谷三丁目店」限定のコラボメニューが、当初は不安を抱えていた常連客からも好評を得ているそうだ。
「『紅とん』常連のお客様は、いつも同じ時間に同じ席で、注文も決まったメニューといった方も多数。それがコラボするようになってからは、昼間にも来店いただけるようになったり、コラボメニューを追加で注文していただいたりと、ありがたい変化が生まれています。1番人気のコラボメニューは『うまき』で、常連さんもそうでない方からも、よくオーダーをいただいています。
昼間提供の『名代宇奈とと』さんのメニューでは、『うな丼 ダブル』をはじめとした、1000円以上のメニューが土地柄(四谷三丁目)のためか人気です。590円の『うな丼』がもっとも売れるだろうと思っていたので、嬉しい誤算でしたね。昼間も全種類のアルコールを提供しているので、『うなぎ蒲焼き』をあてにビールを……なんて使い方をしてくださるのもよく見かけます」
若者のハードルを下げた「麺屋はなび」
新業態の展開時にもっとも頭を悩ませるのが、既存の顧客離れだろう。とくに台湾まぜそば「麺屋はなび」では炭火を扱わないだけでなく、客層も比較的若者向け。不可解にも思えるコラボの背景には、「紅とん」の居酒屋文化に対する熱いモチベーションが潜んでいた。
「『紅とん』のメインのお客様としてもっとも多いのが、40~50代のお一人様の男性。“サラリーマンたちの憩いの場”として愛していただいているからこそですが、今20代、30代の若者も、いずれは歳をとるわけです。純粋に昼間の高い集客力が魅力的だったことにくわえ、『麺屋はなび』さんは20~30代の若者に高い訴求力を持っていらっしゃいます。この層に、居酒屋の楽しさを知ってもらいたかったのです。
コラボ店のオープン後は、願ったとおりに新規の若いお客様が増えました。若者にとって、初めての居酒屋にいきなり訪れるのはハードルが高いようです。抵抗感の少ない昼間に来店経験があることで、夜の居酒屋営業時でも気軽に訪れてもらえるようになりました。
実は『紅とん』に関しては、コラボ第1号が『麺屋はなび』さんです。おかげさまで好調となり、コラボ店を次々に増やしています。そこでさらなる取り組みとして、『名代宇奈とと』さんとのお店もオープンする運びとなりました」