昼は鰻屋、夜は居酒屋…「紅とん」が仕掛ける“コラボ戦略”は三方良しとなるか
コロナ禍での営業制限によって、多くの飲食店が打撃を受けた。そうしたなか、新しい業態を発表するチェーン店が続々と増えている。「日本橋 紅とん」もそんな居酒屋チェーンのひとつだが、珍しいのが他企業チェーンとのコラボ店の実現。
気軽にうな丼を食べられることで人気の「名代宇奈とと」や、台湾まぜそばの元祖「麺屋はなび」とタッグを組んでいるのだ。
今回話を聞いたのは、「紅とん」運営の株式会社ヴィア・ホールディングスで営業部長を務める佐田基貴さん。佐田さんは2002年に入社後、「紅とん」店長時代には同社主催の「最高焼師決定戦決勝大会」での優勝経験もある、「串焼き愛」にあふれた人物だ。
佐田氏に「名代宇奈とと」とのコラボ店第1号の「紅とん 四谷三丁目店」にて、出店の経緯や反響について教えてもらった。
コラボと間借りは何が違う?
コロナ禍では酒類の店内提供や営業時間にたびたび制限が課され、居酒屋業界は試練続きの2年間となった。こうしたなか「紅とん」がもっとも問題視したのは、昼間の休業中の時間。そこにメスを入れる形でコラボ店を導入したそうだが、急速に流行が拡大している「間借り営業」とは、どのように異なるのだろうか。
「あくまで“コラボレーションである”という点が大きな違いです。そのため、従業員の雇用も一貫していますし、原材料も一括管理です。そこで重要だったのが『紅とん』と親和性が高いこと。設備面も含めて、コラボレーションのメリットが最大限引き出せるかどうかについて、検討を重ねました。
さらに『紅とん』は、『サラリーマンたちの憩いの場』をコンセプトにした、ザ・居酒屋。既存のお客様を決してないがしろにしないことは重要でしたね。現にオープン前は『紅とん、閉店しちゃうの?』と、たくさんの心配の声もいただいていましたから」
「宇奈とと」との間には大きな共通点が
「名代宇奈とと」に親和性を見出した理由は、「炭」にあるそうだ。
「炭の扱いや管理は手間が多いですし、教育も必要です。しかし『紅とん』では、看板メニューの『焼きとん』をはじめ、お店での炭火焼にこだわり続けてきました。そのため『名代宇奈とと』さんの炭火焼のうなぎを提供するうえで、新たな機材も必要ないばかりか、すでに炭の扱いに習熟したスタッフがいることが強みでしたね。
現在「紅とん」の店舗スタッフは外国籍の方が多く働いています。『うなぎを初めて見る』スタッフもいましたが、試食すると『おいしい』と一様に好感触。手慣れた炭の扱いの延長としてうなぎの焼き方もすぐに覚えてくれ、スムーズな導入ができました。
また、弊社の別の居酒屋ブランドである『備長扇屋』が昨年夏頃に先にコラボし、いい相乗効果が生まれていたんです。そこで『紅とん』でのコラボ店の展開も決定したのですが、準備期間はわずか1か月。それでもつつがなくオープンすることができたのは、現場スタッフのおかげだと感じています」