子供を殺されても許す。元海軍大将がアフガニスタンの“老人”から学んだこと
「それがアラーの教え」平然と放った一言
本拠地バグラムを出発する前に、私はアフガニスタン側の担当であるサラム将軍に相談した。父親に何を言うべきか、どうやったら後悔を伝えられるか、サラム将軍に尋ねると、彼は私の質問に困惑した様子でこう答えた。
「その父親はきっと許してくれるよ」と、サラムは平然と言った。
「そんなことあり得るか?」私は信じられなかった。
サラムは、まだ私の質問を理解できない様子で、首をかしげた。「それがアラーの教えだから」
私は少し苛立ちながら「あぁ、そうだろうな、サラム。でも、私が出会ったイスラム教徒が皆そんなに寛容だったわけじゃない」
サラムは、私が国際テロ組織のアルカイダやタリバンのことを言っているのだと理解し、微笑んだ。「私はこの村をよく知っている。彼らは良い人たちだ。良いイスラム教徒だ。父親は許してくれるよ」
サラムは、私の懐疑的な表情を見て取った。
「コーランは私たちに慈悲の大切さを教えてくれている。父親が君を許すのは、許すこと父親の苦しみが取り除かれるからだ。子どもを失った苦しみではない。何物もその苦しみを取り除くことはできない。許すことで憎しみや怒りの重荷が取り除かれるんだよ。許すっていうのは、それを受け取る側だけじゃなく、与える側にとっても偉大な贈り物なんだよ」
顔は無表情だったが、目は優しげだった
広い部屋で老人とその息子を前にしながら私はサラムの言葉を思い返していた。彼の言っていることは、果たして正しいのだろうか?
私はまず眼前の息子のほうを見た。彼は目を細め、眉をひそめていた。彼は明らかに私の死を望んでいた。私は父親のほうを見た。私は深く息を吸い、言った。「私は、あなたの愛する人たちを誤って殺してしまった兵士の司令官です。私は今日、あなたと、あなたの家族と、そしてあなたの友人たちに哀悼の意を表するためにここに来ました」
私は、イマームが私の言葉を通訳するのを待った。父親は一向に顔を上げない。
私は続けた。「そして私は今日、この度の凄惨な悲劇について、あなたの許しを請うために来ました」
やっと父親が頭を上げて私の目を見た。その顔は無表情だったが、目は優しげだった。深く、悲しく、傷ついてはいたが、優しかった。彼は私に話を続けるよううなずいた。
「あなたと私は違います。あなたは家庭的な方で、多くの子どもや多くの友人と一緒に暮らしています。私は、人生の大半を家族から離れた海外で過ごしてきた軍人です。しかし、私にも子どもがいて、あなたのことを思うと心が痛みます」
老人の目に涙が滲んでいる。