「挨拶するのが怖い」リモート化で悩める若手社員を救う“一言”とは
挨拶ストレスを排除して習慣にする
挨拶をしないデメリットが大きいため、「抵抗感がある人は、そこに深く思いを込めずに習慣化するのがおすすめです」と、大美賀さん。
「歯磨きや化粧をすることを疑問に思う人は少ない。でも、一旦やめてしまうと、次にはじめようと思うとき負担に感じてしまう。挨拶も同じで、習慣にすることでストレスが軽減できます。意気込んだり気持ちを込めようとしたりせず、学生時代の挨拶『あざーす』『ちーっす』などの延長線上で、言葉を発することを習慣化するとラクです」
最低限「お疲れ様です」「お世話になっています」、帰るときには「お疲れ様でした」。出社するとき、職場の人たちとはじめて会うときは「おはようございます」と挨拶し、よくわからないときは、“とりあえずの一言”で「お疲れ様」で統一すると無難とのこと。また入社したときや社員研修のとき、まわりの人たちをよく観察しておくのもポイントのようだ。
相手に無視をされたり嫌な顔をされたりして挨拶にブレーキがかかってしまうケースも多いようだが、「挨拶がしんどいと思う場合、相手の反応を気にするより、まずは相手を“置物”だと思って、発声練習のつもりで定型の挨拶の言葉をかけるのがコツ」と大美賀さんは言う。
挨拶がなくなる未来
今後の挨拶について、あらためて大美賀さんに尋ねてみたところ、「もし、挨拶を抜きにして、お互いのやり取り、間合いや表情を汲み取るようなことができれば、挨拶のない未来が来るかもしれません。ただ、発語しないと命を守れないような職種や相手の細かいニュアンスの読み取りが必要な仕事では、挨拶は依然として重視されると思います」と回答してくれた
さらに、「たとえば、建設現場などの危険と隣り合わせの現場で働いていて、挨拶もなく角材が突然、ぬぅ~っと出てきたら危ないですよね。こうした現場仕事では、朝礼やすれ違いざまに『ご安全に』と挨拶するのが常識ですが、これは、危険な場面で『危ない!』とすぐに大きな声で警告できるように、という意味もあるからです」とも補足。
「挨拶が苦手だから、仕事が円滑にこなせなくなってしまっては困ります。定型の挨拶の発語を繰り返すことによって、コミュニケーションへのハードルは下がっていきます。挨拶習慣がない人は、とにかく自ら発語することを意識してください」
挨拶をするにはエネルギーが必要で、相手の反応も気になる。とくに初対面や毎回反応が微妙な人への挨拶は、ストレスに感じる人も多いだろう。挨拶レスな職場も増えるなか、挨拶は今後どのように変化していくのだろうか。
<取材・文/山内良子>
【大美賀直子】
公認心理師、精神保健福祉士の国家資格を持ち、カウンセリングと講演活動を行う。2002年より総合情報サイトAll Aboutで「ストレス」のガイドを務め、多様なストレスへの対処法を解説。『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)、『長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか』(さくら舎)など、著書・監修多数。公式「大美賀 直子(メンタルケア・コンサルタント)のホームページ」も更新