脚光を浴びる「アニメの聖地」山梨県。地元の生活はどう変わったか
あなたは「山梨県」と聞くと、どういった印象を持つだろうか。多くの人が「富士山」や「富士五湖」などといった有名観光地の風景を想像するであろう。山梨県はこれまでこういった有名観光地を除けば、メディアに登場する機会はそれほど多くなかった。
しかし、ここ数年のあいだに漫画・アニメを中心としてさまざまなヒット作品に山梨県が登場するようになり、それにともない地元でも作品に登場した場所をめぐる「聖地巡礼」をする観光客をしばしばみかけるようになった。
私・しばうみが住み、そして学校に通う町も、ある日突然「聖地」として脚光を浴びることとなった地域のひとつだ。今回はそうしたアニメの舞台となった地域における「地元民の日常の変化」を伝えていきたい。
『ゆるキャン△』で生活自体が「聖地」に
筆者が良く行く小さなコンビニ。入店すると目に入るのが、キャンプをテーマにした漫画・アニメ『ゆるキャン△』関連の掲示だ。店内には作中に登場する商品をPRするさまざまなポスターが登場。さらに時おり観光客の姿も見かけるようになった。
コンビニだけではない。例えば筆者が「毎日乗っている電車」や「毎日使っている駅」はもちろん、買い物したことがある商店から良く通る道路や橋まで、自分の日常生活の身近な店はもちろんのこと、身の回りのあらゆるモノがアニメや漫画などで描かれ、そして作中以外でもテレビ番組や書籍などさまざまなメディアで紹介されるようになった。
クローズアップされる「日常」
これまで何でもなかった「地方の日常」が急にクローズアップされはじめ、ネット上で「地元では当たり前」であるはずの、作中に登場した食べ物や生活習慣の紹介の解説や考察が行われる様子もみられるようになるのは少し「不思議な感覚」にさせられる。恐らく筆者以外の地元住民もそうであろう。
そして、毎日行くスーパーが、毎日歩く道が、近所の学校が……あらゆるものが「聖地」を構成するもののひと1つとなり、急に日本全国はおろか(コロナ禍前は)海外からも「聖地巡礼」の人々がやって来はじめた。作品に登場するJR身延線ではアニメの名前を冠した特別列車が走り、小さな駅から個人商店まであらゆる場所が作品の、さらには地元のPRに余念がない状況だ。