吉野家「生娘シャブ漬け」発言に見る、なぜ“厄介なおじさん上司”は生まれるのか
吉野家、早稲田大学の対応は適切か
今回の騒動だが、事態が大きくなるにつれ、すぐに動いたのが吉野家だった。18日には臨時取締役会を開き、伊東氏の解任を決定。翌日発表したリリースでは「当社と同氏との契約関係は一切ございません」とバッサリ切り捨てている。
「吉野家のリリースは『明日からはもう関係ありません』と紋切り型ではない怒りが珍しく伝わってきました。吉野家に限らず、日本企業各社がジェンダー平等や女性活躍をうたったSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)に取り組んでいるなかで、こんな問題発言をされてしまっては台無しではないかということなんですね」
一方、開催者である早稲田大学も怒り心頭のようで、18日時点で伊東氏を「厳重に注意勧告」し、講座担当から解任している。白河氏によれば、今回の騒動で参考にすべき点が早稲田大学にはあったという。
「早稲田の対処が早かった理由として、ハラスメントガイドラインが2004年に制定されていたことが考えられます。ハラスメントとは何か、学生が傷つくようなハラスメントを受けた場合、どう対処するかというのが明確に定まっており、そのガイドラインに沿って粛々と手続きをしたという感じでした。企業ではこうしたガイドラインを作っていないところが多く、見習うべき点ですね」
「公益通報者」は保護される法律も
ちなみに、今回の事件は、受講した女性がその経緯をフェイスブックに投稿したことがきっかけで、世間に知られることになった。身元を明らかにしたことで誹謗中傷などのリスクも考えられるが、他の手段はなかったのだろうか?
「今回の投稿は、フェイスブックという知り合いの人たちに向けたものだったので、匿名のツイッター投稿とは違います。また正式な抗議もしています。多くの人の意識を変えた点でもひとつの重要な訴えでした。ただ匿名ではないだけに、投稿者に誹謗中傷がくる恐れもありますが、昨今は匿名の投稿でも特定は可能な時代ですし、裁判で誹謗中傷した人たちが負けています。
もし今後、同様なケースがあった場合どうするかですが、今回のように然るべきところに意見するのが妥当ではないでしょうか? 実名がいやなら組織のハラスメント窓口などは匿名通報もできますし、また『公益通報者』は保護しなければいけないと法律で定められています」