吉野家「生娘シャブ漬け」発言に見る、なぜ“厄介なおじさん上司”は生まれるのか
元常務の男性はずっと「容認」されてきた
吉野家でもヒットメーカーとして知られていたが、ジェンダー意識は低いままだったようだ。
「年代にもよる気がします。1997年の均等法改正で初めて、女性へのセクハラを防ぐための、事業主の配慮義務規定が盛り込まれました。企業が研修するようになった時代と、その前からいた人とは意識が違います。研修があっても上層部の意識が変わらなければ、下も迎合します。伊東氏はギリギリ40代なので、上の世代、つまりハラスメントやジェンダーの意識が低い上層部に受けるような冗談を言ってきた世代かもしれません」
また、日本が「おじさん中心」のホモソーシャル社会である証明になった出来事だとも述べる。
「一部報道で受講生の中には(発言を受けて)笑っている人もいたと言われていますが、やはり周りが笑ったり、ウケたりすることによって、元常務の男性はずっと『容認』されてきたと思います。発言後に講義の会場がシーンとなったり、ざわざわしたりしたら、すぐに空気を読んで、まずいなと感じるはずですが、これまでそのような経験はなかったのでしょう。一人の問題ではなく、ハラスメント、女性蔑視を容認してしまう、周囲にある組織や社会の問題でもあります」
森喜朗元首相の「女性蔑視発言」に通じる
こうした事態について、白河氏は「今は日本のほとんどの企業がまだまだ多様性のない、男性中心の組織となっている」と懸念を表明する。
「2021年2月に日本オリンピック委員会の森会長(喜朗元首相)が人権感覚やジェンダー感覚を疑うような発言をしたのと同じです。『森さんが発言しました』『会場ではウケました』『でも外に出たら大騒ぎになりました』ということでした。
国際オリンピック委員会からも非難され、結局、森さんは会長を辞任しました。ジェンダーに関する発言でこれだけの地位の人が辞任したケースで日本も変わったと思うのですが、まだまだ似たような企業・組織が多数あるということです」