吉野家「生娘シャブ漬け」発言に見る、なぜ“厄介なおじさん上司”は生まれるのか
牛丼チェーン「吉野家」の元常務による「生娘をシャブ漬け戦略」に今なお批判の声が上がっている。ことの発端は2022年4月16日、早稲田大学で行われた社会人向けのプログラムにおける、吉野家ホールディングス・伊東正明常務取締役本部長(当時)が女性蔑視とも取れる発言があり、講義に参加していた女性がSNS上に書き込んだことからだ。
伊東氏は「生娘をシャブ漬け戦略」と称し、「田舎から出てきた右も左もわからない女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする」「男に高い飯を奢ってもらえるようになれば、(牛丼は)絶対に食べない」など、目が点になるほどの過激発言を放った。
『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP新書)などの著書があり、相模女子大学大学院特任教授の白河桃子氏に、今回の“問題発言”の本質について話を聞いた。
「自分の常識が世間の非常識」になっていた
今回の問題発言について白河氏は「元常務(伊東氏)は、時代についていけていないのでは?」とバッサリ。
「この問題は、女性受講者が早稲田大学に抗議したことで明らかになりました。元常務は、自分の周りにいる人たちにウケそうな発言をしたわけですが、おそらく『少し露悪的なことも言うけれど、みんなわかってるよね?』という男ウケ、内輪向けの笑いだったのでしょう。
しかし、時代は変わっており、『自分の常識は世間の非常識』だった。マーケターとして、時代の変化というものを全く捉えていなかったと言わざるを得ません」
外資系出身でも「ドメスティックな会社員」
また意外にも感じるが、SNSなどで今回の件に抗議の声が上がったことについて、教壇に立つ身として「自分も気をつけなくては」と感じた様子。
「今回のプログラムは40人の講師が3か月半、計29回の講義を実施し、受講料は38万5000円(税込)というものでした。価値観は人それぞれですが、一般的に38万円という金額は結構大きなものです。あの発言があったらそれは怒りますよね。大学では先生は優位な立場なのでギリギリな発言をする講師・教授も意外と多いので、私含め、大学講師のなかには気を引き締めようと思った人は多いはずです」
伊東氏は、米日用品大手のプロクター&ギャンブル(P&G)というグローバル企業に勤めていたこともある。グローバル企業はさまざまな人種がおり、ハラスメントやジェンダー教育もしっかりしていそうだが……。
「現在のP&Gはハラスメント、ジェンダーなど人権に関する課題に真剣に取り組んでおり、社員教育、発信などもしている。もしかしたら伊東氏の在籍時はそれほど社員教育がなかったのかもしれません。伊東氏は1996年入社なので、バブルの終わり頃でしょう。すでに退職してしまっているし、もと外資系とはいえ、中身はドメスティックな普通のサラリーマンというケースは多いです」