スマホで発覚した親切な先輩の“裏の顔”に幻滅するまで「俺、あんな食えんし」
スマホを覗いてわかった優しい先輩の裏
先に眠ってしまった坂木さんがふと目を覚ますと、スマホを握りしめたまま眠る小泉先輩の指がズレ、スマホが落ちそうになっていたのです。慌ててスマホを手に持ち、後部座席へ置こうと瞬時に思います。
「けれど次の瞬間、ふと、開いたままのLINEの文字が目に飛び込んできたのです。先輩が文字を大きく設定していたので、目に入ったのだと思います。それと、見慣れた『坂木』の文字も、無意識に視界に入ったのだと思うのです」
そこには「坂木とのバディ終わったらヤバイわ。俺、あんな食えんし」と書かれていました。どういうことなのか理解はできなかったものの、思わず気になり、ほかのやり取りも見てしまいます。
「すると、『お客さんの手前、食べないわけにもいかないし、ヤベーわ。どーしよ?』とか『坂木、ガッチリとか言われてるけど、結構、腹も出てきてるしヤベーよ。あー、ずっと坂木に押しつけておきたかったわ!』とか、書かれていたのです」
体形を維持するために料理を押し付けていた
そして、『腹が出たら女にモテなくなるやん! 肥満とか病気とかもヤバそうだし、坂木とのバディ終わったら、早く別の部署に異動してぇええ!』と、衝撃発言の数々が。坂木さんはショックを受けながらも、そっとスマホを後部座席へ置き、深呼吸をします。
「先輩は自分の体形を守るために、食べ物をすべて押しけていたのです。いくら押し付けられていたとはいえ、料理はおいしかったですし、食費も浮いてありがたかった。その事実は変わりません。でも思惑を知ってしまうと、迷惑な先輩としか思えなくなりました」
先輩の言葉を素直に受け止めて料理をすべて食べていた坂木さんは、肥満や生活習慣病についても考えるようになり、取材のない日はサラダなど野菜中心の生活を心がけるように。そして、迷惑な先輩と離れられる日を静かに待ったとのことでした。
自分の体形を維持するために料理を押し付けていた迷惑な先輩ですが、もしも「最近、体形や病気も気になって食事量を減らしているから、もしよかったら食べてね」などと、事前に伝えてくれていたら、印象も違っていたかもしれませんね。
<TEXT/山内良子 イラスト/本田しずまる(@hondashizumaru)>