青山フラワーマーケットが駅で展開する深いワケ。画期的なディスプレイの秘密も
コンセプトと立地が合致していた
たしかに駅や商業施設の入り口は人通りも多いため、立地としては申し分ないが、ここまで広がることになったのは、「その立地条件が青山フラワーマーケットのコンセプトにマッチしたためである」と酒井氏。
「開業当時、お花屋さんは特別な日にだけ足を運ぶ場所だったんです。購入スタイルも、店員さんに希望を伝えて、冷蔵庫から出してもらうというのが一般的でした。
一方で青山フラワーマーケットは『Living With Flowers Every Day』のコンセプトのもと、Daily(日々の暮らし)に向けた花々を取り扱っていて、お客様がご自身でお花を手にとって選んでいただいています。ですので、通りすがりに花を買える駅や商業施設の入り口は我々にも合っていたんですね」
冷蔵庫がないのに廃棄率が低いワケ
いくら立地がよくても、旧態依然のスタイルで高い花を売っていたのでは通りすがりには買いにくい。しかし、青山フラワーマーケットには気軽に購入できる値段の花々が並んでいる。どんな方法で価格を抑えているのか。
「かつてお花が高かった理由は、あらゆる注文に応えられるようにお祝い用の蘭を含むさまざまな種類の花を用意しておき、冷蔵庫に保管していたからなんです。弊社では基本的にお店に冷蔵庫を置いていません。
入荷の頻度を上げて、主にデイリー用の鮮度のいい花をこまめに仕入れています。町の八百屋さんをイメージしてもらえたらわかりやすいかもしれません。天気などでも売り上げが左右されますが、入荷の頻度が高いとその時の需要に合った分量を仕入れられますので、ロス率は自ずと下がります。仕入れすぎてしまった場合、近隣の店舗とお花を融通することもあります」
一般的な生花店の廃棄率は30%ほどとされるが、青山フラワーマーケットの廃棄率は驚異の3%。それだけ、需要をみこした適切な仕入れ量に調整をしているという。
飲食店などでは、メニュー数を減らすことで廃棄率を下げるアイデアはよく用いられているが、その点について酒井氏は「弊社はむしろ、商品数は多いですよ。入荷の頻度を上げることもそうですが、研修で生産者さんが愛情を込めてお花を育てていらっしゃることをしっかり教わります。なので、仕入れを担当するお店のスタッフのマインドにも、花を1本1本大切に扱うという思いが根付いていますね」とも話す。