生きづらさを抱える発達障害グレーゾーン。過敏で傷つきやすい人たちも
対人関係から生きづらさを感じがちな人々が増えている。発達障害かもしれないと医療機関を訪れる人も多いという。そんななか最近注目されているのが、徴候はあるものの診断には至らない「グレーゾーン」だ。
精神科医の岡田尊司氏の著書『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』(SB新書)では、タイプ別に発達障害未満の生きづらさの傾向とその対策について解説。今回は過敏で傷つきやすい「HSP(Highly Sensitive Person:「敏感すぎる人」の意)」と「不安型愛着スタイル」について紹介する(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。
医学概念ではないが増えているHSP
感覚過敏に苦しむ人は近年とても増えている。正式の診断基準がまだ確立されていないものの、HSPという名称が広く使われるようになっている(子どもの場合はHSC)。HSPは医学概念ではないものの、それだけ多くの人が、自分の生きづらさの原因が過敏さにあると感じていることになるだろう。
しかし、感覚が過敏なだけでは、現在のところ、発達障害にも、ほかの精神疾患にも該当する診断がない状況である。
感覚過敏は、ASD(自閉スペクトラム症)の診断基準の一部を満たすが、それだけでは診断に至らない。一方で、人の顔色や反応に敏感な傾向は、不安型愛着スタイルの人に典型的に見られるが、これは障害ではなく特性だと考えられている。どちらにしても、グレーゾーンという判定になりやすい状態だと言える。
過敏で傷つきやすい2つのタイプ
つまり過敏さにも、感覚過敏のような神経学的過敏さと、顔色に敏感といった心理社会的過敏さがあり、どちらが強く見られるかで、2つのタイプに分けられる。1つは、感覚が過敏なだけでなく、人の顔色や反応にも敏感で、過度に気を遣うタイプで、HSPはこのタイプに相当する。もうひとつは、感覚過敏が強い一方で、周囲の反応にはむしろ無頓着で、気遣いはあまりないタイプである。こちらは、ASDの傾向にともなうタイプだと言える。
自閉スペクトラム症にともなう感覚過敏では、過敏さだけでなく、鈍感さも併存していることが多く、ある面では過敏だが、ほかの面では鈍感だったりする。自分が気にしていることには過剰反応する一方で、相手がどう感じているかといったことには気が回らない。
また、ASDでは、感覚過敏とともに、こだわり症状が見られ、さらに社会的コミュニケーション障害もともなっている。それに対して、一般にHSPと呼ばれる状態では、感覚過敏はあるものの、それ以外のこだわり症状があまり目立たず、また社会的コミュニケーション障害も見られないどころか、むしろ過剰発達しているという点が大きく異なっている。
空気を読みすぎたり、相手の気もちを汲みとりすぎたりしてしまうのだ。それがメリットになる面もあるが、気を遣いすぎて疲労がたまりやすく、また、自分のことよりも相手のことを優先し、損な役割を引き受けるなど、デメリットを生じてしまうことが少なくない。