販売休止の危機も…キンレイ「冷凍食品シリーズ」が鍋調理にこだわる理由
メンテナンスが大変な鉄鍋を使うことも
売り上げ伸長の理由は、商品名の変更だけではない。商品を購入した人たちがリピートする理由は、味。ラーメンならラーメン屋の、うどんならうどん屋の、各専門店の味が楽しめるということ。
「商品によって違いはありますが、たとえば『お水がいらない 鍋焼うどん』の場合、五右衛門風呂のような寸胴の釜で、鰹節や昆布からだしを取っています。また、大阪の有名店カドヤ食堂監修の『お水がいらない カドヤ食堂中華そば』では、鶏のガラを下茹でから行い、豚のミンチ肉や昆布、産地にこだわった雑節を炊出したスープを調味料と合わせたものを冷凍しています」
メンテナンスは大変だが、一部商品で具材を炒めるときには鉄鍋を使うなどこだわっている。もちろん、麺も自家製麺。また、食材調達のために、実際に産地に出向き、原材料選びにこだわることもあるようだ。
「原材料は、キンレイの根幹です。そのため、予算にあてはまる原材料から使えるものを見つけるのではなく、本当においしいものを探して日々奮闘中です。開発のメンバーが畑へ行き、新鮮なキャベツを持ち帰り、実際に炒めてみて、品質を確認することもあります」
冷凍食品は手抜きではない
最近では「冷凍食品なのに美味しい」と言う声もあるが、若生氏は「本当は、冷凍食品だからおいしくできるので、そのことをもっと伝えていけるよう頑張りたい」と語る。
「キンレイは専門店を超える専門店になるということを企業理念に掲げ、実直に取り組み、おいしいものを追求しています。また、冷凍食品は手抜きではなく、『時短』や『手間抜き』という特長を兼ね備えていますので、おいしさと合わせてその価値をお客様に提供したいと考えています。引き続き、みなさまのご期待に沿える商品づくりに一丸となって励んでいきます」
長い期間をかけてジワジワと幅広い層から支持を集める「お水がいらない」シリーズ。新商品など、今後の展開に注目したい。
<取材・文/山内良子>